ユダヤ人の思考法――地球上の0.02%がノーベル賞の40%を占める理由最強フレームワーカーへの道(1/2 ページ)

各分野で優秀な人材を排出しているユダヤ人。彼らの成功への秘けつはどういったものなのでしょうか。

» 2010年05月10日 16時00分 公開
[永田豊志Business Media 誠]

問題 次の人物たちの共通点を見つけ出しなさい。

 ハリウッド俳優やミュージシャンであれば、ウィノナ・ライダー、レニー・クラビッツ、ボブ・ディラン、ウディ・アレン、ハリソン・フォード、マイケル・ダグラス、ナタリー・ポートマン……。

 映画会社なら、ユニバーサル、パラマウント、20世紀FOX、MGMの創業者。

 ITであれば、デルのマイケル・デル、オラクルの創業者ラリー・エリソン、マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO、インテルの創業者アンディ・グローブ。

 金融関係であれば、稀代の投資家ジョージ・ソロス、SGウォーバーグ銀行の創業者ウォーバーグ卿、金融ニュースのブルームバーグ。

 服飾や化粧品業界であれば、ラルフ・ローレン、リーバイ・ストラウス、ダナ・キャラン、エスティ・ローダー、チャールズ・レブロン。

 学者であれば、アインシュタイン、フロイト、コンピュータの生みの親ノイマン、インターネットの発明者……。


 この有名人たちの共通点、なんだか分かりますか? そう、勘の鋭いアナタは気づいたかもしれません、「ユダヤ人」という共通点です。(『ユダヤ人の頭のなか』より)

 世の中には「ユダヤ人が秘密結社を率いて世界征服を狙っている」というような馬鹿げた本も出回っていますが、そんな荒唐無稽な話はさておき、これだけ各分野で優秀な人材を輩出しているユダヤ人とはいったい何者でしょうか? その思考方法とは? そこに知的生産性を高めていきたいナレッジワーカーのヒントがあるかもしれない。今回はそんなテーマをとりあげたいと思います。

全人口の0.02%しかいないユダヤ人、なぜノーベル賞の40%を占めるのか?

 わたしが『頭がよくなる図解思考の技術』を執筆している最中に、強くインスパイアされた参考図書『図解主義!』の著者は、本業は弁護士でユダヤ人のアンドリュー・J・サター氏。そして、そのサター氏が最初に刊行した本「ユダヤ人の頭の中」によれば、ユダヤ人の過去の歴史や文化に根付いた特有の思考方法が、ここまで各分野において類まれな成功を収めさせていると説いています。

 ちなみに、ユダヤ人はイスラエル国民も含めて全世界人口のおよそ0.02%しかいません。そして、欧州から米国に移民としてやってきたユダヤ人のほとんどが50ドル以下の財産しかもたなかったともいいます。つまり、ほとんどの人が無一文からスタートしたというわけです。

 しかしながら、冒頭述べたリストのように、多くのユダヤ人(第2世代、第3世代を含めて)が大成功を収めています。さらに例をあげるとノーベル経済学賞の受賞者のうち、実に40%がユダヤ人という事実、全米に居住するユダヤ人の平均所得は米国平均の約2倍、弁護士や医者、大学教授の多くがユダヤ人という事実をどう考えたらよいでしょうか。

 つまり、ユダヤ人は少数派であるが、平たく言えば「抜群に思考能力の発達した民族」ということが言えると思います。その思考方法、ぜひ、われわれ日本人も取り入れたいものですよね。では、そのベースはどこに起因するものなのでしょうか?

 サター氏の著書を参考にしながら、わたしたち日本人にも活用できるポイントを5つあげてみました。

  1. リスク管理を徹底し、「損切り」せよ
  2. 顧客第一主義を通す
  3. 他人の言語や文化に慣れ親しむ
  4. 分からないことを放置しない徹底した議論
  5. 論理的思考と文書化スキルを身に付ける

ユダヤ人の歴史は、「リスク管理」「顧客管理」の歴史

 こうした思考能力が自然に身についた背景には、これまでのユダヤ人特有の歴史があります。

 まず、驚くべきことに中国と同じくらいユダヤ人の歴史は古い。およそ4000年ほどあります。そして紀元前にイスラエル王国が崩壊して以来、数えきれないほど、様々な国に支配されてきました。会社でいえば、M&Aによってコロコロと社長が変わるのと同じ事です。

 また、ナチスによるユダヤ人迫害は我々日本人もよく知っているところですが、それ以外でも職業や生活を厳しく制限されたり、無実の罪で裁かれたり、他国から侵入した暴徒に襲われたり……と安住の地がないまま、数千年という時を過ごしてきた民族でもあるのです。

 そこで培われたこと、それは「リスク管理能力」と「顧客第一主義」でした。権力の行方がどうなるか、そして時の権力者が何を欲しているのかを常にリサーチして、事前に動かなければ命取りになるわけですから当然です。投資家に必要な「損切り」の精神も、こうしたリスク管理から由来しているのでしょう。ヘッジファンドで巨万の富を築いたジョージ・ソロスはユダヤ人ですが、いかに他人よりも早く欠点に気づいて損切りするかが、投資の秘けつであると言っていたそうです。

 こうしたリスク管理能力や、顧客第一主義の精神は、その後のユダヤ人の起業に大きな好影響を与えたに違いありません。

多言語・多文化、徹底的に議論を楽しむコミュニケーションの習慣

 自分たちの居場所がどこにもなく、支配国の権力闘争によって次々に分断されていったユダヤ人たち。地理的に分散していった彼らは、どのような国に属しても、その言語や文化を必死で学び、商売をやっていかなければなりませんでした。そのため自然と現地に適応する術が身についているのでしょう。これはグローバル化する社会においてはとても大きな強みです。

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