PVは月間160億。月に1億3000万人が来訪するソーシャルサイト。国防総省やレディ・ガガもページを持っている……。
いや、FacebookやTwitterのことではない。日本では非常にマイナーだが、米国では大ブレイク中の「Tumblr」だ。
2月14日、CCI主催のSocialMediaWeekに来日した25歳のCEO、David Karp氏の講演を聞いた。それなりに大きな会場だったが、席の埋まり具合はだいたい半分の100人程度。しかもスーツは1割もいない。膝にMacbook Airをのせたアルファな感じのブロガーがほとんどだ。米国で著名人がこぞって使い始めブレイクしているTumblrだが、日本での認知の低さを如実に表している。
Karp氏はTumblrの特徴を2つ挙げた。1つはその表現力だ。Tumblr創業の2007年当時、Webへのパブリッシングツールとして存在感を持っていた、Flickr、YouTube、Twitterという3つのサービスは、いずれも簡単に投稿ができたが、デザインについてはお仕着せから変えられなかった。一方で、WordPressに代表されるブログCMSは、利用者の裁量は大きいものの、使い方が複雑。
「そこで、7つボタンを並べて、簡単に投稿できる仕組みを考えた。いろいろな種類のものが投稿できる。そしてデザインを自由に選べる」(Karp氏)。
もう1つの特徴は「リブログ(reblog)」だ。クリエイターが作成したコンテンツを、その周囲にいる"キュレーター"が「リブログ」によって拡散させていく仕組み。「Tumblrの一番面白いところは拡散性だ」とKarp氏は言う。
Tumblrのコミュニティは、クリエイター、キュレーター、オーディエンスの3層構造になっていて、キュレーターは作り手ではないが表現したい人たちだ。そしてオーディエンスはキュレーターたちの"集め方"に対して、自分たちのアテンションを与えていくという構造になっている。
若きCEOがTumblrをどのように位置づけているのか、気になってInstagram、Pinterest、Posterousなどの新興サービスへの評価を聞いてみた。彼の答えは、
「我々はクリエイターにとっていいツールを作っていく。何にフォーカスするかということ、クリエイティビティだ。表現をするプラットフォームは現在、YouTube、Instagram、Tumblrしかない」
これには少々驚いた。初期の頃、Twitterと並び語られることの多かったTumblrだが、Twitterとは違い、自らをクリエイティブなツールだと言い切っていることが1つ。「コミュニケーションではなくクリエーション」という言葉も使っていた。
Tumblrのメインユーザーは、世に出ることを目指す14〜20歳の若者と、写真の楽しさに目覚めた50〜60代のシニア層だ、と言っていたのも興味深い。こうしたEmerging Creatorが、Self Expressionプラットフォームを支えているというのだ。
もう1つは、新興のInstagramをYouTubeと並べて位置付けたこと。2007年ならばここにFlickrがきていたはずだが、完全にリーダーが入れ替わった。Instagramはモバイルファーストだ。いまだにAndroid版はなく、PCでもサービスに参加することはできない。そしてKarp氏はTumblrのモバイル対応の遅れを認めている。ちなみに日本ではTumblrへのアクセスの33%がモバイルだそうだ。これはグローバルでは20%であり、日本はモバイルで先行しているようだ。
クリエーター、自己表現の場、そこにTumblrの意義を置いているKarp氏なわけだが、もともとはブックマーク的なツールとしてTumblrの開発を始めたことには触れておこう。Karp氏自身が使いたいと考えていたのは、こっちのツールだったという。本人が述べていたが、思った以上にクリエイターが集まり、リブログという仕組みによって拡散機会が高まったことが、Tumblrの性格を変えていったようだ。
なお160億PVのうち、7割はTumblrユーザー自身で3割がビジターだという。Facebookと同じように、実はかなりクローズドなトラフィックの生まれ方だ。またGoogleよりもFacebookからの送客のほうが多いそうで、SEOからソーシャルへのシフトも明確になってきている。
※この記事は、誠ブログの「3分間ビジネスモデル:25歳のCEOがTumblrを作った理由」より転載、編集しています。
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