炎上コンサルタントが語る、企業TwitterよりもFacebookが有用なわけソーシャルメディアガイドライン(1/2 ページ)

ソーシャルメディアの普及でビジネスはどう変わるのか。そして企業は、どのように利用すればいいのか。ネット炎上に詳しい伊地知晋一さんに話を聞いた。

» 2012年02月20日 11時00分 公開
[「月刊総務オンライン」]
SOS総務

 ここ数年で急激に普及したソーシャルメディア。特に2011年は、アラブの春やアメリカの格差是正デモ、イギリスで起きた暴動などの事件でTwitterやFacebookが、情報伝達手段として大きな役割を果たしたことが話題になった。

 このように、社会を動かす原動力ともなるツールがビジネスにも有効であることは間違いない。しかし、一方でうかつな“つぶやき”による炎上事件など、トラブルも続発している。

 企業はこれから、ソーシャルメディアとどのように付き合っていけばいいのだろうか。

これからのビジネスに欠かせないソーシャルメディアと上手く付き合うには

Webコンサルタント、鹿児島大学非常勤講師、共同通信デジタル取締役兼執行役員の伊地知晋一さん

 ここ数年で急速に普及したSNS(※Social Networking Service)。現在、多くの企業が公式アカウントを取得しており、ソーシャルメディアの中でもSNSはビジネス上重要なツールとなっている。

 SNSの普及でビジネスはどう変わるのだろうか。そして企業は、どのように利用すればいいのか。『ネット炎上であなたの会社が潰れる!』(WAVE出版)の著者であり、炎上コンサルタントの異名を持つ、伊地知晋一さんに話を聞いた。

(※)人と人とのコミュニケーションを円滑にするコミュニティーをインターネット上で構築するサービス。プロフィール機能、メッセージ送受信機能、日記(ブログ)機能などを有している。mixi、GREE、Facebook、Myspaceなどがある。

ネットの普及と新たなリテラシーの問題

 これまでネット上の炎上事件のメカニズムを解説し、企業が取るべき対応を説いてきた伊地知晋一さんは、ソーシャルメディアの代表格ともいえるSNSの普及がもたらした変化をどう見ているのだろうか。

 「まず、SNSに限らずインターネットの存在感が大きくなってきています。そのことの逆説的な証左が食べログやらせ事件ではないでしょうか」

 口コミグルメサイト「食べログ」を舞台に、金銭を受け取り好意的な投稿をしていたことが発覚し物議を醸したことは記憶に新しい。その後、質問サイト「Yahoo!知恵袋」でも同様のやらせが行われていたことが発覚。波紋はネット全体に広がっている。

 「このことが大問題になるということは、インターネットが公のものになりつつあるということでしょう。一昔前であれば、インターネット上の情報など軽く受け止められていたはずです。社会に対する影響力が大きくなっているということですね」

 そして、このことはリテラシーの面でも新たな問題をはらんでいると伊地知さんは指摘する。

 「この件で不正が行われたと怒っている人の中には、インターネット上の情報は正しいのだと、信じて疑わない人たちもいます」

 口コミサイトにしろ質問サイトにしろ、誰もが書き込める場であり、そもそもその情報が正確であるという保証はない。しかし、それが正しいという前提に立っているからこそ、不正が行われたことに対して怒ったわけである。逆に、この件に関してしょせんその程度のものという受け止め方をした人もいる。

 「誰もが書き込むことのできるインターネット上の情報を、正しいと思ってしまうのは勘違いという他ありません。しかし、口コミ的情報の存在が大きくなってきていることもまた事実です。その背景にあるのは、Facebookの普及でしょう」

単なる誹謗中傷とは違うSNS上の主義主張

 2011年9月、Facebookの登録会員数が全世界で八億人を超えたと発表された。チュニジアのジャスミン革命に端を発するアラブの春において、情報伝達で重要な役割を果たしたとされるFacebookは、今や1つの世界標準になったといってもいいだろう。

 その大きな特徴は、実名での登録を推奨していることだ。日本ではこの実名性が、根強い匿名主義と相いれず、普及は遅れていた。

 しかし、ある調査によるとここ1年ほどでFacebook利用者数は5倍以上増えたとされ、急激に浸透したことがうかがえる。実名で発せられることにより、情報の信頼性が以前より高まり、届きやすくなったといえるだろう。そして、自分の意見を持っている人が増えていると、伊地知さんはいう。

 「以前のように匿名でコソコソ悪口をいうのではなく、正々堂々と自分の意見を主張する人が増えています」

 悪口を書かれなくなったからいいかというと、必ずしもそうはいえない面もある。注意しなければならないのはユーザーの勘違いから攻撃される可能性だ。この場合、たとえそれが勘違いであっても、書き込んだ側は自分の正義を確信しており、単なる誹謗中傷では片付けられないというのが難しいところだ。また、情報が届きやすくなったことで、一度動きが起きると非常に展開が速い。

 このようなトラブルの例として、SNSと直接の関係はないが、米国で起きたトヨタ車の大規模リコール問題を挙げることができるだろう。

 この事件では当初、トヨタのレクサスで電子制御装置の欠陥による急加速によって事故が起きたと疑われていた。トヨタ側は否定していたが、世論の沸騰を受けて大規模リコールを実施せざるを得なくなった。しかし、後に米運輸省の事故調査で、電子制御装置に不備はなく、事故の原因はアクセルとブレーキを踏み間違えたことによると発表された。

 トヨタは事実無根のいいがかりで多大な損害を被ったことになるが、このとき米世論を形成した怒りは、勘違いとはいえ正義によるものであった。今後、トヨタのケースのような不条理なトラブルがSNSを舞台に多数起きてくる可能性は高いだろう。

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