【ブレインライティング法で考えた】自動車の新しい(ユニークな)使い方アイデア発想実践記(1/2 ページ)

アイデア発想のメソッドを実践していく本連載。前回は残念ながら軽い挫折感を味わう結果となってしまいましたが、果たして今回は? 挑戦する技法は、ブレインライティング法です。

» 2012年03月05日 11時55分 公開

 世の中にあるさまざまな発想メソッドを、実際に試して実験、検証する本企画。第2回は「ブレインライティング法」を試します。前回同様、仮想のお題を用意し、メソッドに忠実に従って検証していきます。

 今回の結果も、アイデア創出の支援をする組織「アイデアプラント」の代表、石井力重さんに監修してもらいます。

石井力重(いしい・りきえ)さんプロフィール

石井さん近影

 1973年、千葉県生まれ。東北大学大学院理学研究科修士課程卒業。技術系商社から東北大学大学院博士課程(MOT専攻)、独立行政法人のフェローを経て、2009年4月にアイデアプラントを設立。現在は「ブレスター」「智慧カード」などアイデア創出支援ツールの企画開発、企業・団体向けの新事業・新製品開発支援、さまざまな創造技法を紹介するワークショップなど、多彩な活動を展開している。2011年6月には、東北地方のビジネス活性化と震災復興を目指す「Fandroid EAST JAPAN」を設立、同理事長に就任。仙台を拠点に、Androidアプリ開発技術者の育成と能力向上、アプリ関連ビジネスの活性化に尽力している。Webサイトは「石井力重の活動報告」


 挑戦するメンバーは中山、誠 Style編集部の岡田さん、そして誠 Biz.ID編集部で本連載を担当する上口さんの3人です。

ブレインライティング法とは

旧西ドイツ生まれの創造技法で、議論をせず紙にアイデアを書き出す手法。書き出したアイデアを回覧板のように順番に回しながら、前の人のアイデアから新しいアイデアを生み出していく。単独で発想するスタイルのため、参加メンバーが身分や立場の違いを意識することなく発想することが期待できる。本来は6人ほどで行うのが適しているが、少ない人数でも実施できる。


 以下のステップに沿って進めていきます。

  • ステップ1:メンバー全員にA4用紙を配る
  • ステップ2:用紙を縦に3つ折り、横に4つ折りにし、12個のマス目を作る
  • ステップ3:1分間でアイデアを1つ、マス目に書きこむ
  • ステップ4:右隣の人に用紙を渡し、左隣の人から用紙を受け取る
  • ステップ5:前の人が書いたアイデアを参考にしたり、発展させたり、関連付けたりしてアイデアを書きこむ(※必ずしもではなく、全く新しいアイデアでもよい)
  • ステップ6:これを12回繰り返し、全てのマス目を埋める
  • ステップ7:1人1人順番に自分が書いたアイデアを発表する
  • ステップ8:全てを発表後、用紙を回しながら「いいね!」と思ったアイデアに印をつける
  • ステップ9:用紙を切って各アイデアをバラバラにし、評価が高かったアイデアを中心に関連するものをグルーピングする

 では、張り切って参りましょう!

お題:自動車の新しい(ユニークな)使い方を考える

 今回のお題は、「自動車の新しい(ユニークな)使い方を考える」。単なる移動手段として以外の、新しい用途はないか? という問いかけをします。

 用意した物は、人数分のペンとA4用紙です。

 以下、各ステップを事実と心の動きを、なるべく客観的に淡々と描写してみます。

ステップ1〜2:ブレインライティング法のシートを自作する

 有料の「ブレイン・ライティング・シート」という方法もありますが、今回はA4用紙を縦3×横4に折ることで代用しました。1枚当たり12個のマスを作ります。

ステップ3〜4:アイデアを書き、隣の人と用紙を交換する

 iPhoneをストップウオッチ代わりにし、1分×12回、時間をカウントダウン。「1分経つごとに音を鳴らしては用紙を交換」を淡々と繰り返します。最初の4、5個くらいまでは無理なくアイデアが出るので、リズミカルに「ハイッ、ハイッ」とこなしていけます。

ステッ5〜6:前の人のアイデアを参考にし、発展させてアイデアを生む

 始める前は「1アイデアに1分もあれば、十分だろう」と予想していましたが、意外に時間は残りません。というのも、(1)前の人が書いた内容を読む(2)理解する(3)関連付けて思考し、自分のアイデアを生み出す(4)それを文字にしたためる、という4つのプロセスをこなさねばならず、テンポよく進めないと1分はあっという間にすぎます。

 (※)実践してみて気が付いたのですが、急いで書くとはいえ、他のメンバーが読みやすい筆跡を心掛けましょう。「これ、何て書いてあるの?」と確認し合うのはタイムロスになります。

 半分を経過した辺りから当然のごとくアイデアは枯渇してきます。全員がうなり声をもらし、ストップウオッチのカウントダウンを気にしつつ、「何かアイデアをひねり出さなきゃ……!」という焦りが生じます。

 ラスト3分になると、アイデアの質よりも「タイムアップまでに何かをひねりだす」方にばかり意識がシフト。すると、前の人のアイデアも、自分と同ように苦し紛れのようになっていきます。

 ここで、受け取った側も関連・発展をさせることが難しくなる……という悪循環に。ただ、意外にも最終的なベストアイデアは、最後の方に苦し紛れに出したものだったりしました。ですので、この“苦し紛れタイム”は脳に汗をかいているタイミングでもあり、決して無駄ではありません。アイデアの質に、その時点では満足できなくても、投げやりにならず踏ん張りましょう。

ステップ7〜8:発表と評価タイム

 全員が一度もパス(1分以内にアイデアを出せずに用紙を送ること)することなく、各自12個、合計36個のアイデアが時間内に生まれました。なんだかんだ苦しみつつも、まずは目標がクリアできたことにちょっぴり満足。

 すぐに1つ1つのアイデアを発表していきます。前回のKJ法のときにも感じましたが、この発表タイムは他メンバーの未知の発想に触れることができる瞬間でもあって、じつにワクワクします。私はこのときが一番好きです。

 全ての発表を終えたら、各自が全アイデアの中から「いいね!」と思うものに、それぞれ印を書き込みます。(※)全員の評価が高いと3つ印が付きます。もしくは、誰も評価しない無記入のアイデアもあります。

 印の数に制限はないので、良いと思ったものにドンドン印を入れます。ここで重要なのが「自分のアイデアにも遠慮せず印を打つ」こと。自画自賛するようで、自分のアイデアにチェックを入れない気持ちになるかもしれませんが、それはNG。遠慮や謙遜はアイデア発想のプロセスでは百害あって一利なしです。素直な気持ちでチェックを入れていきましょう。

 以下、評価が高かったアイデアの一例です。

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