震災時に信頼、政府かTwitterか――マイケル・サンデル教授の「民主主義の逆襲」：5000人が白熱した特別講義（2/6 ページ）

[上口翔子，Business Media 誠]

東電以外から電気を買えるとしたら？

サンデル　では私からケンに質問しましょう。君は代替エネルギー源、再生可能エネルギー源も含めて、もっと開発せよということでしょうね。では選択肢が与えられたらどうしますか？　電力料金について。電力を東電から買ってもいいし、さらに余分に払って、エネルギーを再生可能エネルギー源から買い取れるとしたらどうしますか？　ただ、料金は高いとしましょう。いろいろな国でそういうことが可能になっています。そういう選択肢があればどちらを選択しますか？

ケン　僕は100％再生可能エネルギーを指示しているわけではありません。ただ、どうしますかね。どっちがより悪が少ないか、財力があれば東電以外のところから買うと思います。

サンデル　電力が高かったとしてもですか？

ケン　そうです。どちらが悪か、という度合いによると思います。

サンデル　活発な良い議論が聞かれましたね。では他の人でまだ提起されていないポイント、理由があると思う人、議論に参加してください。

ハルミ　みんな、原子力や東電から買うことしか考えていないんですけど、家の屋根にソーラーパネルを付けたりとかして、もし日本中の家の屋根にソーラーパネルが付いたらきっと原子力よりも安全に電力を作り出せるようになると思います。それで、えっとー。すいません緊張してしまって。

サンデル　お名前は？　ハルミですね。分かりました、いい意見ですよ、そんなに緊張しなくていいですよ。

ハルミ　その原子力だけとかじゃなく、どこかから買うとかだけじゃなくて、自分でできることをしていけばいいと思うんですね。うちの家もソーラーパネルを屋根に付けていますが、昨年の夏は電気料金が半分になりました。もし国民全体がそうして、国がそれに今原子力に使っている事故の保障とか処理のお金を使ったらどうでしょう。

　もっと未来につなげていけるようなエネルギーの開発費とか、そういうものに労力やお金を当てればいいと思います。資本主義だから今まで以上にもっとソーラーパネルの効率が上がる研究がされていくだろうし、もっと未来につなげていける。

　ソーラーパネルは、爆発しても半径100キロとか200キロとかに影響を及ぼしませんし、海流に乗って流れることもありません。そういうもっと安全でかつ持続可能なものがたくさんあるので、そこにお金をかけたり、自分で選択をしていくべきです。そしてインターネットでそういう意見を簡単に発言できるので、もっと個人個人が発信をしていくべきだと思います。

サンデル　どうもありがとうございます。ではコウタロウに聞きましょう。何か答えはありませんか？　反論はありませんか？

コウタロウ　反論とはちょっと違うのかもしれませんが、今の意見自体には非常に賛同するところはあります。ただ今すぐできること、中期間でできること、さらに長期間の目標でできること、というのが少し違うんだと思うんですね。

　サンデル先生が提示した東電の値上げ問題は、早ければ今年の8月に起こるであろうことです。ではそれを許容するかしないかの話になったときに、今おっしゃったようなソーラーパネル設置の普及などは、ショートタームではなくてミドル、ロングタームの議論かと思います。よってちょっと同列の議論としては成り立たないんじゃないかと思いますね。

　私自身は別にあの、代替エネルギーは賛成ですし、政府としてもそうしたソーラーパネルを設置する助成金制度はやっていますので、どんどんやっていった方がいいとは思います。ただ本当にこの直面している、すぐ年内に起こるであろう電力の値上げや、燃料に対しての価格の変化というのは、また別の議論として許容すべきことなのかなと思います。

サンデル　分かりました。ハルミ、何かそれに対して手短に意見ありますか？

ハルミ　ソーラーパネルを付けるのが、ちょっと時間がかかると言いましたが、品不足でない限り、家に設置すると決めて電話かけて「設置したいんです」と言ったらその日のうちにもしかしたらできるかもしれないくらい、早くできます。

　電力の値上げはすぐできることだと言ったんですけど、じゃあ電力の値上げをしたところですぐに電気量が増えるかといったらそういうわけでもないですよね。例えば疫病が発生したからといって、その街の人間をすぐに火葬しちゃうというのは早いと思います。人道的にどうかと言ったらそれは絶対許容できないことだと思うんですよ。

　電気量の値上げというのは、結構そういうのと一緒でかなり短絡的な話なんじゃないでしょうか。知恵を絞ればいくらでもアイデアが出てくると思うので、もっと人間は知恵を絞るべきだと思います。

サンデル　はい、そうですね。緊張している人の割にはとてもいい意見を出してくれました。とてもいい議論ができました。ありがとうございます。