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» 2012年06月22日 16時15分 公開

震災時に信頼、政府かTwitterか――マイケル・サンデル教授の「民主主義の逆襲」5000人が白熱した特別講義(6/6 ページ)

[上口翔子,Business Media 誠]
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日本の小春日和が見えた!?

サンデル では教えてください。なぜ何かを変えたいのならば、主張すること、声を挙げることという考えが(2)の原発事故は政府と原子力産業の癒着が原因だったという立場につながったのでしょう。

マサツグ 震災は津波で避けられなかったとすると、僕らが何をしていなくても結局起きていたことになると思います。別に僕らの努力は関係ない。ただ、今回の震災は例えば政府の対応であったり、東電の問題が重なってでここまで大きくなってしまったと感じています。とすれば、こういったところに、ステークホルダーの話であるとか、有権者としての立場であるとかで、僕らは意見を言ったり変えたりする手段はあると思うんです。

 ただそれがなかなか実現しずらいために、あきらめて国が悪い、東電が悪いと言っているように思います。ですので、そういう手段をもっと活用すべきなのではないかなと、そうしたら世界は変わるんじゃないのかなと思います。

サンデル 先ほどマサツグはなかなか声を上げるのは難しいと言いましたよね、ただ今回の危機で声を上げなければならない、必要だと思ったと言いましたよね。ではあなたの友人はどうでしょう。そしてマサツグは何歳ですか?

マサツグ 40歳です。

サンデル 40歳……まだ若いですよね? 私もそう思っています。ではあなたやあなたの友人たちはもっと発言しようと思うでしょうか? 世界をよりよく変えるために今ならばもっと発言しよう、東日本大震災以前と比べて、今ならばもっと発言しようという気持ちになっていますか?

マサツグ 自分の知り合いでいうと、その後TwitterやFacebookで自分の意見を述べる人が増えてきているように思います。そういうのを、小さい声ではあると思うんですが、重なることでムーブメントが起こりうるのではないでしょうか。中近東での話もありますし、そういうものはあくまできっかけですが、実際のシステムの変更になったらいいのかなと思います。

サンデル 今、中近東のアラブの春の話が出ました。確かにあれは本当にインスピレーションを与えるような、大きな変化を生み出すきっかけとなりましたよね。中東の人たち、若者も高齢者もですが、特に若者が世界を変えようとしました。

 ということは、あなたが言っているのは、振り返ってみると震災が起きて原発事故が起きて、今ならば日本にはその体験が日本の春となったかもしれないということでしょうか。アラブの春のように。

マサツグ 先ほどTwitterと政府のどちらを信頼するかという議論でも出てきましたが、今までテレビなどで見るだけだった人が、自分の意見も言えるようになっているのはあきらかに大きな変化だと思っています。すぐにではないかもしれませんが、これがきっかけになって変わってきています。春の前の、小春日和にはなるのではないかと思います。(会場拍手)

サンデル 春の少し前ということですね。でも意を強くさせられる時期です。参加をしてくださった皆さんに感謝したいと思います。民主主義のためにこういった体験を通じて学んだことに議論をできて、感謝します。


サンデル 今晩のこの議論全体を通じて示されたのは、非常に強力なものがある、希望を持てるものがあるということです。今日のテーマは「民主主義の逆襲」です。民主主義が抱える課題について議論をするところから始めました。

 第2部では日本が復興のこの時期に直面している課題を取り上げました。原発再稼働の問題、東電の問題、政府の問題、信頼の問題、そして最終的に行き着いたのは民主主義という問題です。そして政治に参加すること、どうすれば若い人たちが政治に参加する気持ちになるかを議論しました。

 どれも意見が分かれる問題で、ほぼ全ての質問で賛否が半々に分かれていました。っして波紋を呼ぶような問題について熱心に議論できました。しかも公の場で、です。

 最後に言えることは、悲劇的な経験ではありましたが、もしかしたら東日本大震災を経験したことは、重要な瞬間、歴史的な瞬間だったといえるのかもしれません。日本人のすばらしい行動に、世界が評価しました。震災の直後から何週間、何カ月にもわたって団結心、結束が示されただけではなく、さらに民主主義に対する理想についても見られたのかもしれません。

 今示唆されたのは、主張するということ、発言をするということ、そして議論に参加するということ。そして、変えるということです。もしかしたらこれが、日本にとって新たな始まりになるかもしれません。そしてもしそうなるのだとしたら、東日本大震災は、日本にとって民主主義の新たなスタート、そして民主主義的な精神の出発になるかもしれません。

 日本の春とはまだ言えないかもしれませんが、分かりませんよ。まあ小春日くらいにはなっているのかもしれません。それだけでも、希望が持てると思います。将来が明るいと言えるでしょう。さらに議論を、熟議を継続すべきです。そして一緒に声をあげていきましょう。(会場拍手)

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