震災時に信頼、政府かTwitterか――マイケル・サンデル教授の「民主主義の逆襲」5000人が白熱した特別講義(3/6 ページ)

» 2012年06月22日 16時15分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]

危機が生じたときに信頼する情報源は?

サンデル では次の議論です。今日、何度か出てきた問題です。がれきの受け入れについて、そして原発再稼働の議論でも、また東電の電力料金値上げの議論の中でも出てきた問題、つまり「信頼」という問題です。ここで直接、信頼そのものを取り上げて皆さんの意見を聞きたいと思います。

将来、危機が発生した場合にあなたは政府、もしくはブログやTwitter、非公式のWebサイトどちらを信頼しますか? 放射線の線量についてなど、正確な情報源としてどちらを信じますか?

 政府を信頼する人はパンフレットの白面を、ブログやTwitter、非公式のWebサイトを信頼する人はパンフレットの赤面を示した。

サンデル もうびっくりしますね。ほとんど接戦です。皆さんちゃんと挙げて頂けましたか? 後ろの方で上げなかった人がいましたよ。かなり接戦でしたね。ただほんの少し、わずかですが政府を信頼する人が多かったように思います。

 それにしても信頼という問題について、かなり意見が分かれていますね。ではどういう理由なのかを聞きましょう。皆さんにそれぞれの立場を聞きたいと思います。まず情報源として、政府よりもブログやTwitter、非公式のWebページの方が信頼できるという人。なぜ信頼できるのか、理由を教えてください。

ジュン 東日本大震災発生時の教訓として、政府の発信する情報が正確さを期するあまりに遅かったということがありました。やはり危機に関しては、迅速な情報提供が身を守るためには必要なことだと思っているので、そういった意味では、ブログなどの不確実な情報でも情報収集していろんな人が分析する方が信頼できると考えました。

サンデル お名前は? ジュンですね。ということは、必ずしも信頼性よりもスピード、情報の早さ。Webサイトやブログの方が政府に比べて情報がすぐに出てくるということですね。

ジュン 危機発生時には、それが最初に必要なことかと思っています。

サンデル 分かりました。では、他の人の意見を聞きましょう。政府よりもブログやTwitterの方が信頼できる理由を言ってくれる人。

ユウホン まず、ブログやTwitterは、政府に比べて東電などの利害関係が少ないです。あと、政府は1つの情報しか発信しないですが、ブログなどはいろんな方面からの情報があります。それを立体的に分析したら、正しい情報がより得られるのではないでしょうか。

サンデル ということは、既得権益の話ですよね。スピードだけではなく、政府はやはり企業とのかかわりが密着していて、ブログなどの方がより独立しているので信頼できると。

ユウホン そうです。

サンデル お名前は? ユウホンですね。いまユウホンが主張したのは、さらに別の理由でした。では次に、政府が信頼できるという人、理由を説明してください。

ユウヤ 僕がブログやTwitterを信頼しない理由は、そうしたツールを使う人たちは、発言に責任を持たなくてもいいというのが1番にあります。政府は発言に責任を持たなくてはいけないのが前提にあるので、僕はブログやWebは信頼していません。ただ、政府を信頼する前提としては、絶対的な力のあるリーダーが存在することです。絶対的なリーダーが存在する国では、このリーダーについていけば大丈夫だという信頼が起きるからです。

サンデル お名前は? ユウヤですね。ユウホンはユウヤの意見に対してどう思いますか?

ユウホン 現実問題そんな絶対的なリーダーが存在するとは思えません。というのが1つと……。(会場拍手)

 もう1つ、絶対的なリーダーの発言も独自に収集した情報ではなく官僚機構がばく大な資料の中から集約したもの。要は伝言ゲーム的に周ってきた情報を集約しているんです。よって責任は分散されて、信頼性はTwitterとあまり変わらないと思うんですけど。

ユウヤ まあ、(元の資料がたくさんあることで)信頼が分散されることに関してだったり、その信頼に関しては僕たちの慢心があるのかなと思っています。正直こういう事故や事件が起きたときに強くなるだけであって、普段はあまりそういう目を持たないですよね。僕たち、特に若い世代で投票率が低うのもそれが不足しているのではないかなと思います。

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