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» 2012年08月08日 11時00分 公開

説明書を書く悩み解決相談室:「これ一体何? 訳が分からない」感の演出が効果的なとき (1/2)

簡単に答えが見えることこそ、丸暗記で通用してしまい、実は分かっていないケースが多いもの。人が頭を働かせるのは、謎があるときです。相手に本当に理解してもらうために、謎かけの演出を工夫してみませんか?

[開米瑞浩,Business Media 誠]

 アイデアクラフト・開米瑞浩の「説明書を書く悩み解決相談室」第39回です!

 今回は、先日、営業コンサルタントの吉見範一さん庄司充さん、そして開米の3人が新宿の地下街で会ったときに出た面白い話を紹介します。

 吉見さんは初対面の人を前にすると極度に緊張してうまく話せない、営業には不向きと思われそうな性格の人物。それでも、長年営業の仕事をしてきてダントツの実績を上げた経歴を持っています。誠 Biz.ID で森川滋之さんが執筆した連載『奇跡の無名人たち』のモデルになった人物でもあります。また、自身でも『「ユニット式営業組織」のススメ』の記事の中で過去のエピソードを紹介しています。

 営業は何かと誤解されやすい仕事で、世の中には「電話をかけてかけてかけまくれ!! 契約が取れるまで帰ってくるな!! 取れない奴はクビだ!!」と根性主義のノリで営業マンを使い捨てにする会社もあります。そんなことから、「営業だけはやりたくない……」と敬遠される職種No.1といっても過言はないでしょう。

 ところが吉見さんはもともと「根性主義的営業」には向いていない性格。そんな自分でもできる、ストレスなく使える営業手法を工夫していきました。それが絶大な成果を挙げ、しかも吉見さん自身だけでなく、その方法を教えた多くの営業社員の成績も急上昇させたのです。今ではその手法を教えてくれという依頼が多く、営業コンサルタントとして東西南北日本中を駆け回る毎日です。

 そんな吉見さんと、同じく営業コンサルタントの庄司さん、そして開米の3人が打ち合せを口実に酒を飲んでいるときに飛び出した会話が発端でした。

テクニックよりも手順を大切に

吉見 セミナーをやっていると「営業で使えるちょっとしたテクニックを知りたい、教えてくれ」の声が多いんだよね。

開米 例えばどんな話ですか?

吉見 営業特有の名刺交換テクニックとかね。クロージングのトーク術とか。

庄司 ああ、あるある。ちょっとしたテクニックが分かれば売れると思っちゃうんだろうね。

吉見 そうなんですよ。だから、違うんだよって。個別のテクニック以前に手順なんだってことを一生懸命話すの。

庄司 分かる分かる。よくいるんだ、手順を間違えてる営業さん。ヒアリングもしないでプレゼンを始めちゃうとか。いくらプレゼンがうまくてもそれじゃ売れるわけないのに。

吉見 そうそう、そこだよね。個別のテクニックより、1つずつ手順を重ねて行くのが大事だってこと、これをいつも営業セミナーで必死に説明するんですよ。でもなかなかピンと来てくれないみたい。手順を間違えるとダメだってことを何かストンと腹に落ちるみたいに説明する方法ないかなあ……?

 「テクニックよりも手順が大事」なのは理屈として難しくないはずですが、営業セミナーの達人で知られる吉見さんが話しても、「なかなかピンと来てくれない」もどかしい状態のよう。通り一遍な説明だけでは、納得感は得られないのでしょう。仕事ができるようになるノウハウを教えている人間にとって、一番肝心なところが伝わらないのは悔しいものです。何とかできないかな……と、私はその話を聞きながら考えていました。

「ポイントはこれ。覚えといて!」では通じない

 この話は論理的に難しいことではありません。もしこの説明をするためのプレゼン資料を作るとしたら、普通に考えればこの程度です。

 このぐらいなら、その場でホワイトボードに手書きしても間に合います。ただし、簡単だから通じるのか? というとそうはいきません。ポイントはたった2行。1分もあれば書き写せます。しかし、一字一句間違えずにノートに書いても「ああ、なるほど!」の納得感は得られません。単に書き写す作業をしただけで、考える過程を伴っていないからです。「試験に出るから覚えといて!」と言えば覚えるのは簡単でしょうが、それこそ丸暗記しているだけ。実際には役に立ちません。

 人が考えるのは、「これって一体何……?」と思うような「謎」を目にしたときです。訳の分からない謎を目にしてその意味を探り、「……つまり、こういうこと?」と自分で仮説を立てて自分の言葉で解釈を語り、検証しようとする。そのとき、人はその意味を本当に理解します。それには一体どんな謎かけの方法があるのでしょう?

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