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» 2012年08月08日 11時00分 公開

説明書を書く悩み解決相談室:「これ一体何? 訳が分からない」感の演出が効果的なとき (2/2)

[開米瑞浩,Business Media 誠]
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相手が思わずとポカーンとするような絵を見せる

 営業ノウハウを教えるセミナーでこの話をするときに使えそうな「謎かけ」として、私がひらめいたのはこんな方法でした。

吉見 ……な、何、これ?

開米 訳が分からないですよね(笑)。でも実はさっき吉見さんが言ってた「テクニックよりも手順」の話をするときにこれを使うといいはずです。

吉見 あ、あー……そうか! なるほど!

 吉見さんもさすが営業セミナーの達人。すぐに察してくれました。このチャートは、次のように話ながら使います。

トークサンプル

 営業の仕事は、実はこんな感じのものなんですよ。

 ……え、訳が分からないって? そうですよね、何が何だかさっぱりですよね。でもね、話は簡単で床の上に下からA、B、C、Dと、それぞれ形の違うブロックを積み上げていって一番上に「契約」というボールを載せる。そういうものなんです。

 例えばこれ、一番下にBを置いたら? ……そう、ダメですよね。安定しないから。だから、大事なのは積み上げる順番です。Bの上にDを置こうとしてもダメですよね。正しい順番で積んでいくと一番上にボールが載せられます。しかもDには枠が付いているから、そのボールが転げ落ちない。

 個別のテクニックは下手でもいいんです。AやBの形がちょっとゆがんでいても問題ないです。でも、順番間違えたらダメ。ここを間違えちゃう人がすごく多いんです。だから、テクニックよりも手順を考えてください。それが大事です。

吉見 そうか、これなら……。

開米 こうすれば、最初に「何これ?」となる謎を出して、自分でその意味付けを発見してもらえますから。

吉見 なるほど、これ、いい! 使うよ。ありがとう!

人は「分からない」からこそ考えようとする

 実は、1ページ目で紹介した図(以下に再掲)のような「簡単なことしか書いていない個条書き」の弱点は、その簡単さ自体にあります。簡単な言葉で書かれた説明文は、読めば分かるように感じる。だから、読んで覚えれば理解したような気がしてしまうんです。それが落とし穴。実際は「腑に落ちた理解」には達していないことが多いのです。

 人が本当に理解するには、自分の体験を踏まえた上で考える過程が欠かせません。そして、考えるには「何これ? 分からない」の感覚が必要。分からないなりに頭を働かせることで1つの解釈を見つけられます。そして自分で見つけた解釈は、単に人から教えられてメモしただけの文言よりも記憶に残ります。

 前述の「トークサンプル」の中で強調して書いた「例えばこれ、一番下にBを置いたら?」の問いかけに注目してください。2つ目の図を見せた上で「一番下にBを置いたら?」と問えば、相手は「こりゃダメだ」とすぐ分かります。

 つまりそこで、順番が大事だと自分で気が付くわけです。もちろん、自分で気が付いても、この場合は適切なチャートと質問というお膳立てがあってのこと。それでも「今から言うこと大事だから覚えておいて」と一方的に教えられただけよりも、理解が深くなります。

 というわけで、一見簡単なことを教えようとするときには「これ一体何?」と相手が思うような演出をしてみてください。簡単そうに見えることこそ、丸暗記で通用してしまい、実は分かっていないケースは多いもの。人が頭を働かせるのは、謎があるときです。そんな、聞いた人が「ポカーン」としてしまうような謎かけの演出を工夫してみませんか?


 当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」例文があれば遠慮なく開米へお送りください(ask@ideacraft.jp )。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。

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筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』『図解 大人の「説明力!」』、『頭のいい「教え方」 すごいコツ!』


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