文章がスラスラ書けるようになる5つのステップ読解・図解力で教ぶ説明術

情報量が多い説明書などの文章を書く時、知っておくと役立つ問題解決法を5ステップで紹介します。これを知っていればスラスラ文章が書けるかも?

» 2011年10月18日 18時30分 公開
[開米瑞浩,Business Media 誠]
誠ブログ

 社会人の文書化能力向上研修を行っている開米瑞浩です。今なお体重100キロを超えているので、2桁台を目指して今日も奮闘中です。目指せ、最終ゴールは80キロ。

 さて、文書化能力というのは説明力の一種です。人が何かを説明するシーンはいろいろありますが、文書化しなくてはならないのは情報量が多くてしかもその情報の間に複雑な関係があるときですね。そうした場合は口頭だけで話を通すのは無理なので、文書にする必要があります。

 ところが、文書といっても文章だけだとこれがまた難しい。文章というのは、複雑な関係を表現するのには向いてません。文章だけで延々と解説された説明書なんて読みたくないですね?

 だから、図を書く必要が出てきます。といっても、これも一筋縄ではいかないのが困るところ。うっかりすると図解してかえって誤解を招くケースもよくあります。どんな図を書けばいいか分からないから本当はもっと分かりやすく書きたいのに、今日も文章だけにしておこう……とお茶を濁すこともあるのではないでしょうか。

 そんな場面にもし心当たりがあったら、下記の「説明書を分かりやすくするための5ステップ」をちょっと見てください。

説明書を分かりやすくするための5ステップ

 複雑な情報を説明している文書は普通は分かりにくい(難解)ですね。ところがその難解さは、問題の構造が分からないから難解になっているだけで、構造が見えると一気に分かりやすくなる場合がよくあります。

 では実際にどうやって問題の構造がよく分かる文書を作るのか。A〜Eまでおおまかに5つのステップがあります。

A:まずは一度ざっと読んでみる

 これは「他人が書いた文書を分かりやすく書き直そう」という場合ですね。とにかく元ネタがあるわけなので、これを読むわけです。ただしここで何時間も悩んでも仕方ないので、1、2回程度軽く読みます。

B:文書に含まれる情報をざっと列挙してみる

 元ネタの情報を書き出します。ここは付せん紙に手書きがオススメ。深く考えなくていいです。ちょっとでも気になったキーワードを荒波の勢いで書き出します。この作業、単純に見えるので必要ないと思われがちですが、手書きをすることによってなんとなく読み流していた情報がしっかり頭に入り、意外に効果的です。

こんな感じです。付せん紙がたくさん

C:鍵になる構造の見当を付ける

 そしてここがキモ、超重要。「どんな構造なのか」を見極めるわけです。ここでトコトン考えます。構造は千差万別多様なものがあるので、「この問題はどんな構造なのか?」を見抜かなければなりません。慣れないとここですごく時間がかかりますが、人間は一度経験のあることが二度三度と起きた時には、短時間で理解できる場合が多いです。場数を増やして経験値を上げていくと、この時間を何十倍にも短縮できます(初めて見たときは4時間かかってたものが2度目は5分、3度目は1分で分かるようになった、なんて珍しくないです)。

D:その構造に沿って必要な情報を集めて整理する

 構造の見当が付いたら、それを構成する情報を細部までつじつまが合うように整理します。細部までつじつまが合うことが肝心で、大抵この段階で元ネタの文書に書いてある情報の不足や矛盾に気付きます。「あるテーマについて必要な情報をモレなく正確に短時間で」書けるケースはごく少ないので、不足や矛盾があるのが普通です。でもこれになかなか気付けません。気付くためには、構造化して細部の整合性を確認する必要があります。

 と、ここまでやると、元ネタの文書の不足や矛盾も解消して、必要な情報が過不足なく分かりやすく構成された「たたき台」ができます。

E:見やすいように表現を組み立て直す

 そして最後の作業がこれ。家を作る仕事に例えると、きれいな壁紙を貼るのがこの段階。要は見栄えを良くする作業であり、それだけです。この点、かなり誤解があると思うのですが、図解というとこのE段階のことだと思っている人がどうやら多いんですね。違います。そこは誤解です。

 ある文書を分かりやすく書けるかどうかは、C段階で8割決まり、D段階で9割5分まで決まります。E段階に意味があるのは、最後の5分ぐらいです。家造りに例えるなら、「家が住みやすいかどうか」は、9割5分までは家の構造で決まりますよね? ということです。きれいな壁紙を貼ったから、すごく住みやすい家になるなんてありえません。住みやすい家を作るためには生活動線を考え家具配置を考え、断熱や配管、配線を考え、日照を考え、といった構造の部分が大事なのであって、きれいな壁紙は最後のちょっとした美意識を満足させるだけです。ここが本命だと思ってはいけないわけです。

 「きれいな壁紙」も最後の仕上げとしては重要ですが、その前のB〜Dのステップをおろそかにすると、せっかくのきれいな壁紙も活きてきませんので、どうぞご注意ください。

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筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』『図解 大人の「説明力!」』、『頭のいい「教え方」 すごいコツ!』


※この記事は、誠ブログ「読解力図解力と教える技術の謎解きブログ:説明書をわかりやすくするための5ステップより転載、編集しています。

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