仕事の「意味」を考えさせる田中淳子のあっぱれ上司!(1/2 ページ)

与えられた仕事から何を学ぶか、何を感じ取るか。これを考えさせるのも上司の大事な役割です。

» 2012年10月22日 11時35分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]

編集部からお知らせ

 ITmedia エグゼクティブでの人気連載「田中淳子のあっぱれ上司!」が誠 Biz.IDにて再開します。悩める上司と部下の付き合い方を、企業の人材育成に携わって27年(!)の田中淳子さんが優しくにこやかに指南するこの連載、部下とのコミュニケーションに悩んでいる上司はもちろん、そうでない上司も必見です!


 「ああ、経理って本流じゃないんだよなあ。営業みたいに花形でもないし」「新人だから電話とれって言われる。こういう雑用はつまらないなあ」――。

 与えられた仕事から何を学ぶか、何を感じ取るか。人によって仕事から得られるものはずいぶん異なると思うが、どういう職場のどういう仕事であっても、意味を見いだせるほうが学べることは多くなり、成長にもつながる。自分で意味や意義を見いだせればそれに越したことはないが、もし部下や後輩が意味を理解せずに仕事に取り組んでいるのに気づいたなら、上司や先輩は教えてやることも必要だ。

仕事の意味を見出すと仕事が楽しくなる

 ある経理部門のマネージャーがこんな話をしてくれた。

 「僕のところに新入社員が配属されて、今OJT中なんです。彼にずっと言い続けていることがあります。経理って各部署から出てきた書類通りに支払処理などをしていく部門ではあるけれど、書類を機械的に処理するな、と。どの部署からどういう書類が上がってくるか、意識して見ていなさい。そうすると、社内の仕事の流れがだんだん見えてくるから」

 「例えばね、“あ、この部署はこういうものをまとめて購入しているな。ということは、○○を手掛ける予定なんだろうな”とか、“この部署は××会社と取引が増えたけど、こいうアライアンスを組んだのか”とか、経理書類を見ているだけでも各部門の方針だとか動きが分かるようになってくるんだよって」

 「経理というと“間接部門だから”とか、“裏方だから”など“つまらない”と思う人もいるんだけど、全社の数字がすべて集まってくる部署なのだと自覚していたら、書類を単なる紙として処理するのではなく、そこに意味を見出すはずなんです。意味が見えてくると、とても楽しくなってくるんですね。僕はそうやってこの部署で長年仕事してきたので、やりがいも感じるし、楽しいと常に思っています。だから、新人にもそういう意識を持ってほしいと思っています」

 どういう部門のどういう仕事に就いていても、そこにどのような意味づけをするか、その仕事から何を学ぶかは、自分で考える必要がある。でも、部下や後輩自身は経験が浅すぎて「仕事」の意味を自分で見つけられない、気づけないケースもある。その場合は上司や先輩が上記の例のように教えてやるべきだ。そうすれば、部下や後輩は、自分の仕事をより前向きに捉えるようになるだろう。

電話をとることを単なる「新人仕事」にしない

 若手育成の場面では、こういう例がたくさんあるはずだ。例えば、新入社員が各部署に配属され、最初の指示はたいてい電話をとることである。グループ電話などがなくなってきて、全員が個人携帯を持っているという職場も増えてはいるが、それでもまだ固定電話を新人に取らせる職場は多い。

 新人にとって「電話をとる」という仕事。一見「新人には何もまだ任せられないから電話でもとっておいて」という「雑用」に見えなくもない。「新人仕事」というか、「与えられる“仕事”もないので、とりあえず何かしていて」というような仕事だ。

 そう考えてしまうと、新人自身も「電話ばっかり取らされている」とやらされ感を感じることもあるだろうし、「電話をとるように指示した先輩」のほうも「新人仕事だから」という程度にしか意義を感じないこともあり得る。互いに目的意識を持たずに「新人だから電話をとる」と単純に考えているだけの場合もあるだろう。でも、そこにもきちんと意味を見出して取り組む人がいる。

 まずはマナーである。敬語の使い方。電話の受け答え。メモの取り方。伝言の聴き方、伝え方など、ビジネスマナーの基本がぎゅっと濃縮されているのが「電話応対」だ。でも学べることは、単にビジネスマナーだけではない。

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