部下を叱る2つのポイント田中淳子のあっぱれ上司!(1/2 ページ)

叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。

» 2012年11月14日 09時15分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]

編集部からお知らせ

 ITmedia エグゼクティブでの人気連載「田中淳子のあっぱれ上司!」が誠 Biz.IDにて再開します。悩める上司と部下の付き合い方を、企業の人材育成に携わって27年(!)の田中淳子さんが優しくにこやかに指南するこの連載、部下とのコミュニケーションに悩んでいる上司はもちろん、そうでない上司も必見です!


 叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。泣かれたらどうしようと心配になることもある。だから「部下の仕事ぶりで気になることがあるが、まあ、いいか」「次回も似たようなことがあったら、その時に伝えよう」と先送りしてしまうこともあるだろう。

 でも、仕事をする上でそれがとても大事なことであればその時、その場で言わねば相手のためにならない。言いづらいことを伝えることもまた上司という立場に求められることなのだ。

 今にして思えば、私は周囲に叱ってくれる人が案外大勢いた。その時は厳しいなあと思うこともあったが、何年も何十年も経ってみて、叱ってくれた上司や先輩は実はとてもありがたい存在だったことに気付く。

「間違ってはいない」けど、叱られたこと

 もう20年くらい前の話だけれど、ある時、上司が「この交通費精算書、書き直して」と書類を戻してきた。当時はまだ手書き書類で提出していたものだ。「間違っていましたか?」と聞くと「いや、間違ってはいない」と言う。

筆者 ではなぜ?

上司 丁寧に書いていないから。

筆者 でも読めますよね。

上司 読めるけど、これ、田中さんがちゃんと書いた字じゃないでしょ。

筆者 あっ、はい……。

上司 もともと字が上手でないというのなら構わない。でも、これって、乱暴に書いたようにしか見えないから。綺麗に書ける人が書いていないから、書き直してって言っているんだよ。

 ……なるほど、そういうことか。「はい、失礼しました。書き直します」そう言って、一文字ずつ丁寧に書いて出し直した。

 変な言い方だけれども、この上司の叱り方にこの時私は、少し感動してしまった。私だったらそんなことを部下にいちいち言わないような気がする。「もっと丁寧に書けばいいのに」とは心では思いつつも、新入社員でもない相手に言うことをためらい、その場をやり過ごしていただろう。でも上司は、わざわざ書類を私の席まで持ってきて、付き返しながら「書き直して」ときっぱり告げたのだ。こんなことをきちんと言うというのは、本当にスゴイことだと思う。お蔭でそれ以来、書類を丁寧に書くことに対する意識は高まった。言われなかったら気づかなかったことかもしれない。

「なぜならば」をセットに

 ある20代の女性から聴いた話である。「新入社員の時、上司から肘をついて仕事をしてはダメと注意を受けました。その時私は、右手でマウスを持ち、左手で頬杖をついていたのです。上司は、そうやって肘をついているというのは、真剣に仕事をしていないように見えるから、やめなさい――と付け加えました。ああ、そういうことかと思って、それ以来、仕事をしている時の姿勢に気を付けるようになりました」

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