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» 2012年11月14日 09時15分 公開

部下を叱る2つのポイント田中淳子のあっぱれ上司!(2/2 ページ)

[田中淳子,Business Media 誠]
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 さらにこうも続けた。「新人で、何がいいか、悪いか、分かっていない時期だったので、びっくりしました。そんなことまで言われるのかあと驚いたのですが、そういう風にはっきり言ってくださって、ありがたいなと思っています」

 これも、本当に些細(ささい)なことである。それでも、上司は部下を注意した。「叱れない」という上司が増えている中でこんな小さなことでも指導するのはやはり素晴らしい。

 私の書類の話でも頬杖を注意された彼女の例も、どちらも上司は注意する際に「なぜならば」と理由を添えていることがポイントである。部下の行動改善を求める場合、単に「○○はダメ」とか「○○をしないように」などと「NGな行為」を指摘するだけでは不十分だ。「そのことの何がどう悪いのか」「どういう影響を及ぼすからいけないのか」という理由が分からないと、相手の行動を引き起こしにくい。

 叱る場合のポイントは、「○○をしてはいけない」+「なぜならば」と理由をセットにすることである。だから、上司は叱る前に「理由」はなく叱ろうとしていないか自問自答することも大事だ。理由を添えられないとしたら、理不尽なことを言おうとしているだけなのかもしれないと考え直してみる必要もある。

責めるより「〜してほしくない」

 ところで、もう1つ上手な叱り方がある。それは、「私は」を主語にする言い方である。「あなたは」ではなく。「わたしは」と一人称で語るのだ。英語では「I message 〜」とか「I statement 〜」と言う。

 以前、数人で打ち合わせをしている時、私はその場にふさわしくない発言をしてしまったことがある。「あ、まずい」とは思ったのだが、話がそのまま流れ続けたので、その場では何も言わずに済ませた。後日、別件で上司と話すことがあり、ついでのように言われたのがこの件だった。

 「この間の打ち合わせで、○○と言ったけれど、あれは言ってほしくなかった」。心当たりがあったため、即座に詫びた。

 「どうしてあの場でああいう発言をしたんだ?」と責められるような表現より、「あの場でああいう発言はしてほしくなかった」という言い方のほうがよりずしっと心に響く。素直に反省もできる。

 叱るというのは本当に難しい。でも、その場ですぐ感謝されなくても、いつかきっと感謝される。「あんなことを言ってくれたのは、あの人だけだった」「よくあの時叱ってくれたなあ」とありがたいと思われる。

 ある30代のリーダーがこんなことを言っていた。「配属された部署にすごく厳しい上司がいた。本当に怖かった。でも、数年経って、違う部署に異動したとき、その上司が自分を守ってくれていたということを知った。自分に厳しかったけれど、上司は上司として防波堤になってくれていたのだと分かった。だから、今は感謝している」

 正しいことを言っていれば、いつか部下はこんな風に分かってくれるはずだ。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


  • 著書「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など
  • ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!
  • Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko

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