想像することが苦手な人に、年間ビジョンの作り方ボクの不安が「働く力」に変わるとき(3/5 ページ)

» 2013年01月01日 00時00分 公開
[竹内義晴,Business Media 誠]

自分の得意な五感情報から引き出す

 私が昨年1月に行った方法はこうです。

(1)「こうなったらいいな」と思うことを決める

(2)1年後にタイムスリップし、「すでにそうなっているうれしさ」を現在進行形で感覚的に抱く(「胸のあたりが充実感で満たされている」など)。このとき「それをかなえることができるか/できないか」という実現可能性や現在ある環境やスキルなどの制限を加えない

(3)その心地よさを十二分に味わう

(4)それがかなっているのは、いつ、どこで、誰と、何を、どのようにかなえているかを4W1Hの視点で具体的にしてみる。((2)で、身体感覚ですでに疑似体験しているため、具体的にする問いを自分自身に対して投げると、視覚的なイメージを想像しやすくなる)

(5)その状況を視覚的に想像(イメージ)したり、それがかなったときに周囲からどのように称賛されているかを言葉にし、聴覚的な情報を引き出したりする

(6)具体的になった視覚情報、聴覚情報、身体感覚情報を十二分に体験する

 私は物事を感覚的にとらえるのが得意なので、まず「それがかなっていたらどう感じるか」「どんな楽しさがあるか」を身体感覚で味わい、それからそのシーンを具体的にしていくことで視覚的なイメージや聴覚的な情報に落とし込んでいくわけです。このように自分が得意な感覚からその状況を想像し、具体的にしていくことでイメージや声といった情報も引き出しやすくなるのです。

イメージができるようになったAさん

 以前、私は「イメージができない」というAさんから相談を受けました。Aさんによると、職場の上司から「3年後をイメージして、今やるべきことを考えなさい」と言われたそうです。ですが、Aさんは「イメージ」という言葉の意味がよく分からず、「3年後をイメージできない自分は、想像力がないのではないか」と悩まれていました。

 そこで私は「Aさんの好きな趣味は何ですか?」と聞きました。Aさんは登山が好きだそうで、私はこう聞きました。

 「なるほど、登山が好きなのですね。登山にもいろんな楽しみがあると思うのですが、山頂に登ったときに広がる360度のパノラマや美しい景色が好きな人もいるでしょうし、登っている最中に聞こえる森を流れる風の音や鳥のさえずりが好きな人もいるでしょう。もしくは、たくさんの緑を吸った風が肌に触れる感覚が最高という人もいます。Aさんにとって登山の魅力とは何ですか?」と。

 すると、Aさんは「風が肌に触れる心地よさ」「登りきったときの達成感」と言いました。

 ところでAさんへの問いで、何を探ろうとしていたのか、あなたはお気づきでしょうか? 「山頂に登ったときに広がる360度のパノラマや美しい景色」は視覚的な映像、「登っている最中に聞こえる森を流れる風の音や鳥のさえずり」は聴覚的な音、「たくさんの緑を吸った風が肌に触れる感覚」は、身体感覚的な問いだということに。私は、Aさんがどの五感を使うのが得意なのかを探っていたのです。

 Aさんは登山の喜びを「肌に触れる心地よさ」「達成感」などの身体感覚として味わうことが好きと言いました。そこで、私はこう続けました。

 「なるほど。風が肌に触れる感覚や登りきったときの達成感が登山の魅力なのですね。それでは、Aさんが仕事を通じて3年後に達成していることがあるとします。それはどんな出来事ですか? もしそれが達成していたら、どんな感じがすると思いますか? その感覚は、体のどこで感じますか?」

 するとAさんは「胸のあたりで充実感を抱く」と話してくれました。私は続けました。

 「なるほど。胸のあたりで充実感を抱くのですね。それでは、もしその充実感を抱いているシーンがあるとしたら、それを教えてほしいのですが、それはどんな場面ですか? 周りに誰かいるとしたら、誰とそこで何をしているのですか?」

 するとAさんは「職場で、同僚と○○をしているときに感じます」と言ってくれたので、私はこう話しました。

 「Aさんは今、きっと職場で同僚と仕事をしているシーンを思い浮かべていると思います。それがAさんが分からないと言っていた3年後のイメージです。では、そのシーンをもっと具体的にしていきましょう」と。

 そうして、3年後のイメージを具体的にしていきました。

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