マクドナルドがこだわった「らしさ」とは何か?トップ1%の人だけが実践している思考の法則(2/3 ページ)

» 2013年02月26日 10時20分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

企業の「らしさ」とは何か?

 企業にはそのサービスを印象付ける「ブランディング」が必要です。ブランディングは、顧客が自社と競合企業とを識別できるようなコンセプトを構築すること。一言でいうと「らしさ」です。「らしさ」を壊して、むやみに多角化したり、ヒト、モノ、カネといった企業の持つ貴重なリソースを分散させたりすることは避けるべきです。コアビジネスの付加価値を高める努力を怠ってリソースを分散させると、すべてがどっちつかずになって崩壊するのが関の山です。

 また、「らしさ」は企業文化でもあります。技術や業務プロセスは容易にまねすることができても、企業文化や組織の雰囲気というのは人と人とのコミュニケーションの上に成り立っているので、容易に模倣はできません。企業文化が、その企業のコアコンピタンスになっている企業は強いのです。

 例えばザ・リッツ・カールトンの上質なおもてなし、サウスウエスト航空の乗務員による機内エンターテインメント、東京ディズニーリゾートの提供する夢の国は、すべて現場でサービスを提供する1人1人の「顧客に楽しんでもらおう」という強いマインドセット(気構え)がもたらすものです。日本マクドナルドも、厳しい時代を乗り切るために、店舗スタッフの教育や評価制度などの「人」の問題に取り組んだのは、まさに「マクドナルドらしさ」は現場のサービスにある、といった信念ゆえだったのでしょう。

 「らしさ」を保てている企業は、強く、そして、長期にわたって繁栄できます。誰もやっていないことをやろう、というイノベーションに根ざした企業文化は特に強いです。

 例えばAppleの「らしさ」は、希代のクリエイター魂を持つ創業者スティーブ・ジョブズが作ったものです。Appleはそもそもコンピュータメーカーでしたが、今では半分以上の売り上げがiPhoneという携帯電話メーカーです。

 しかし主要製品のカテゴリが変わろうとも、私たちは、「この製品はいかにもAppleらしい」と感じることができます。それは、携帯電話やPCといった機械に機能だけでなく、ジョブズが求めたデザイン上の「セクシーさ」や、「驚くべき操作性やインタフェース」があるからでしょう。企業文化のコアパーソン亡き後、Appleが「Appleらしさ」を保っていけるかどうかが、注目されます。

ソフトバンクとマクドナルドとAppleの奇妙な関係

 話は脱線しますが、ソフトバンクの孫正義氏は学生時代から日本マクドナルドの創業者である藤田田氏を尊敬していたそうです。そして孫正義氏が高校生の時に「どうしても会いたい」と、いきなり当時の社長だった藤田氏を尋ねました。そのときに藤田社長がアドバイスしたのが、次のような内容だったといいます。

 「これからビジネスをやるなら、コンピュータを勉強しろ」

 孫正義氏はそのアドバイスを胸に後年、ソフトバンクを創業。通信事業に乗り出し、iPhoneで大ブレイクしました。そして今、Apple出身で元コンピュータ技師でもある原田社長が新しいマクドナルドの価値を作り出し、さらなる飛躍を続けているというのは、何とも運命めいたものを感じます。

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