なぜ新入社員は反応が薄いのか?ひといくNow! 人材育成の今とこれから

まもなく新年度です。ここでは、新入社員の研修をしていて「反応が薄いな」と感じたときに役立つ、ある方法を紹介します。

» 2013年03月25日 12時15分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]
誠ブログ

 あと数日で4月。そのせいか最近、新入社員の育成に関連するブログのアクセスが増えています。そこで今回は、新入社員について育成現場で感じていることともに、指導上のヒントをお伝えします。

2012年度入社社員の傾向から

 毎年12〜3月は、前年に入社した新入社員のフォローアップ研修を多くの企業で実施します。当社でも、東京商工会議所で開催している公開講座(複数の企業から参加者を募り実施するセミナー)と、各企業ごとで実施する研修を担当しています。

 そこで新入社員世代と接していて感じるのは、本当に素直で真面目だということです。

 彼らの良い面を挙げると、学んだことはすぐに取り組みます。例えば、発表の場面である1人にアドバイスすると、次の人はそのアドバイスを生かして取り組みます。理解力と対応力が高いのが特徴です。

 一方で2012年度入社社員を「指導する側」を見ると、次のような課題があるようです。

  1. 反応が薄い
  2. 自分から関わってこない(受け身である)
  3. 立ち直りが遅い

 今回は「反応が薄い」ことについて紹介します。

新入社員の「反応が薄い」とはどういうことか?

 研修を担当する講師や上司、先輩が職場で業務を教える際、やりづらさを感じるのは新入社員の反応が薄い時です。

 例えば研修場面。講義を聞いている様子はあるものの、表情や態度がほとんど変わらないため、理解ができているのかいないのか、全く分かりません。また現場で指導をする場面では、質問や確認がないので理解ができているものと思い、しばらく経って様子を見ると、途中でつまずいたままじっとしている。こんな状態が(よく)あります。

 実際に私がフォローアップ研修を担当した時のメンバーも無反応でした。しかもそれは1回だけではなく、複数の会社で似たような反応です。

 どのような様子かと言うと、姿勢よく前を向いて話を聞いてくれてはいるものの、無表情。体勢も変わらない。本当に話を聞いてくれているのか様子がつかめない状態でした。正直言って「のれんに腕押し」で、研修スタート時から疲れを感じるほどでした。

 しかし、疲れを感じたとそのままと言う訳にはいきません。このような時、どうすれば良いでしょうか?

 例えば、私の場合は次のように取り組んでみました。

 研修開始後、ひと通り話を終えたところで簡単な指示をして反応を見ました。すると、すぐに指示通り動けることから、「聞きながら理解している」ことは分かりました。

 私はこう感じました――「彼らは反応の仕方が分からないのかも」。そこで彼らに、「人の話を一生懸命聞こうとすればするほど、うなずくとか、メモを取るとか、首をかしげるとか、反応するのを忘れてしまうようです。反応をしていない自覚はありますか?」と聞いてみました。

 彼らは「そんなこと初めて言われた」というように少し驚いた表情を浮かべ、そこから表情が和らぎました。

 そして「恥ずかしいかもしれないけれども、これから反応してみてもらえますか? 自分でできる範囲で構わないので」と伝えると、彼らは、首を縦に振り(うんうん)という仕草をしました。「では、やってみてもらえる? できる人は『はい』って言ってみて」と言うと、声を揃えて「はい」と返してくれました。

 反応できるようになれば、反応してくれるたびに「ありがとう」や「いいリアクションだね」とか、「その反応待ってたよ」などと伝えると、場はどんどん活性化します。

 このことから、新入社員の反応が薄いのは「身体で表現するリアクションの仕方を知らない」ということが根底にあると考えるようになりました。

なぜリアクションが薄いのか?

 私は、新入社員世代の育ってきた環境に要因があると考えています。というのは、彼らの主なコミュニケーションツールが携帯電話のメールやSNSだったからです。携帯メールやSNSでのリアクションは、相手が書き込む文字を見て、自分の頭の中で考えて文字に変換し、送信すれば完結します。自分の表情や姿勢を変える必要はないのです。

 恐らくいいリアクションをしようとすればするほど、頭の中をフル回転させ、表情は真顔になるでしょう。PCに向かっている時、電車の中でモバイルツールを見ている時などの人の姿を思い浮かべると、分かりやすいかもしれません。

新入社員研修やOJT期間で訓練しておくこと

 以上のことから、今の新入社員世代の多くは、対人場面における反応の仕方を知らない、あるいは訓練の機会がなかった可能性が考えられます。

 これから新入社員の育成期間を迎える会社では「リアクションの仕方」を訓練の1つに取り入れてみてはいかがでしょうか?

 訓練の仕方は簡単です。うなずき、手を挙げる、メモを取るなど、比較的簡単なリアクションの仕方をまずは練習させます。

 その上で研修や指導の場面で良いリアクションを取ってもらえたら、そのリアクションに対して好意的なフィードバックを返すことです。

 「ありがとう」「いい視点だね」「いい質問だね」「よく気が付いたね」「ナイスリアクション!」「グッドタイミング!!」などなんでもかまいません。こちらが、相手のリアクションを受けとめてフィードバックする。それを繰り返しておくだけです。

 それができれば彼らも習慣として身に付き、自然と反応できるようになることでしょう。新入社員や若手社員の「反応が薄いな」と感じることがあったら、試してみてください。

※この記事は、誠ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-:なぜ新入社員は反応が薄いのか?」より転載、編集しています。

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