手書きメモに特化した異色のデジタルツールとして登場したシャープの電子ノート「WG-N10」には、賛否両論がある。開発陣に製品のコンセプトやターゲット、今後の進化の方向性について聞いた。
ネット上のレビューを見ると、シャープの電子ノート「WG-N10」(以下、電子ノート)には賛否両論がある。
賛成派は、書くことに徹したシンプルな機能であることや書き味の良さを高く評価しているようで(前回の電子ノートの記事で、「手書き版ポメラ」と書いたのも真意はそこにあった)、Amazonのレビュー欄でもそういう声が上がっている。
その一方で、1万円超という価格は、機能のバランスを考えると積極的に購入する動機に乏しく、筆者の周りでもそんなふうに考える人が少なくなかった。デジタル化する際のアシスト機能がなく、クラウド連携にも対応していない端末に“1万円超は出せない”というわけだ。さらに、最近人気を博している7インチタブレットのサイズ感や価格が電子ノートと近いことも影響している。似たようなサイズ感のツールを複数持つことへの抵抗感は想像に難くない。
筆者は前回の電子ノートの記事で、製品そのものを評価するのではなく、シャープの過去のPDA製品やユーザーのニーズに鑑みて、ありうべき次世代モデルを“妄想”し、提案させていただいた(蛇足だが、この“妄想提案”という言い回しはシャープの方にはウケていた)。
そして今回、この電子ノートがどんなコンセプトで企画され、市場にどのように受け入れられているのか、また、次世代モデルはどのようなものになるのかをシャープの開発担当者に聞いた。
話をうかがったのは、シャープ デジタル情報家電事業本部モバイルソリューション事業部システムソリューション開発部の西宮健司氏だ。同事業部は電卓やFAX、電子辞書などのコモディティ家電製品を開発している部署だ。
電子ノートのプロジェクトがスタートしたのは、2011年後半。開発にあたっては、営業、企画、技術などの各職種でグループを作って自分たちが欲しい製品を構想し、その1つが電子ノートだったという。
開発コンセプトは、「紙のノートに代わるツール」。書き味にとことんこだわり、ディスプレイには感圧式の液晶を採用した。“電子機器を操作している”という違和感を覚えない作り込みを目指して開発を進め、手のひらが液晶面に接していても反応しないようチューニングしたのも、そのあらわれだ。
想定ターゲットは30〜50代の男性。会議や出張などでノートを持ち歩き、メモしている人たちに、日々使ってもらえる道具をイメージしたという。「20代のビジネスマンだとスマートフォンでテキスト入力します。だからこの想定になりました」(西宮氏)
データのPCへの移行手段がUSB接続であるのも、この年齢層をターゲットとしたためで、それができるリテラシーはあるだろうと考えられていたわけだ。また、画像形式がBMPファイルなのは、それがWindows標準であることを考慮してのことだという。
実際のユーザー層も、男性が多いという。「ユーザーから返ってくるハガキのほとんどは男性です。また、想定した層よりも上の60代の人も少なくないですね」(西宮氏)。もともと高齢層はユーザーハガキが戻ってくる率が高いが、それでも目立っているという。
紙のノートのよさは、IT機器にはつきものの“充電切れ”を気にせず使えることでもあり、電子ノートでも1回の充電で長く使えることを目指したと西宮氏。A6というサイズは、既存の文具用カバーなども使えるようにしたかったからだという。もちろんこれも、文具的な存在感を狙ってのことだ。
さらに操作性も重視している。いくつもの機能を盛り込むと操作が複雑になり、単機能機器ならではのシンプルな使いやすさが損なわれてしまう。そこで、すらすら感のある書き心地を優先させ、複数のノートを記録・保存するというシンプルなスタイルになった。
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