社員研修は本当にコストのムダなのか?人材育成の今とこれから(2/2 ページ)

» 2013年04月25日 11時30分 公開
[宮崎照行,Business Media 誠]
誠ブログ
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現場で起こっていること

 一方、実際の現場ではどのようなことが起こっているのでしょうか? 現場では「人」「場所」「時」によって環境が大きく変わります。また、その組織特有の非公式な知識も求めらるので、研修で習得した知識やスキルをそのまま当てはめるには限界が生じます。特に、電話応対ではそれが顕著に見られます。

 先ほど私が優秀だといった2013年度の新入社員は、研修で習得したことをそのままアウトプットしようとするので、ミスやトラブルが発生します。ミスやトラブルが発生してしまうと「自分は研修でしっかりやってきた。講師からもいいフィードバックももらっている」意識をもった新入社員は困惑し、そして業務に対する不安や自信喪失につながっていきます。そうなると、当然、新しい環境における行動のモチベーションが大きく下がってしまいます。この状況を放っておくと、最悪のケースとして早期離職につながっていきます。また、ここで採用や研修に携わった人事担当者と現場のマネジャーとの間で新入社員に対する認識のギャップが生じ、お互い不信感が生じる可能性も出てきます。

 しかし、そうは言っても新入社員の前提条件が大きく変わることはありません。よって導管メタファー的(知識伝達方式)内容や、あらかじめ状況が設定された中でのワークロールプレイングが中心にならざるをえません。その中で、私が実施しているのが研修で学ぶスキルや知識の意味付けをしてもらうことです。環境が変化しても、不変的な意味付けを行うことで対処できるからです。

受講者自身に考えさせ、理解してもらう

 例えば、「なぜ、相手の目を見てしっかりとあいさつをしなければならないのか?」「なぜ、電話応対では内容をしっかりとメモ取りをしないといけないのか?」の意味を考えてもらうことです。講師がその意味を一方的に説明するよりも、受講者自身に意味付けをしてもらうことで、深いところで理解できるからです。そうなれば応用もしやすくなります。幸いなことに、今年の新入社員は優秀であったため、私から「考えてください」と言ったら真剣に考えてくれました。

 このようにして2013年度の新入社員研修は終了しましたが、これはあくまで4月のOffJT(Off the Job Trainingの略。職場とは別のところで行う従業員の教育訓練)が終了したに過ぎません。あくまでも新入社員研修の目的は、できる限り早く環境になじみ成果を出せる人材になってもらうように行動変容を促すことです。

 1つの研修は、1つで完結するものではありません。組織戦略に沿った複数の研修が1本の線につながることで、確かな成果が生まれるのです。

※この記事は、誠ブログ「本当の人材育成:研修の現場から:新入社員研修を終えて その課題と意味」より転載、編集しています。

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