ビジネス文書は、実用文でありコミュニケーションツールの1つです。読み手が誤解したり、推論する必要のないように書かなければなりません。まずは、独りよがりにならないための、相手にきちんと伝える基礎的な約束事を覚えましょう。
コミュニケーションの手段が、「相対して話す」から「書いて相手に伝える」へと移行してきています。ちょっとした用件でも電話でなくメールを使い、書き込みができるインターネットのさまざまなサービスは隆盛を極めています。読み手に正しく理解をさせ、好感を抱かせるビジネス文章のテクニックとはどのようなものか。その基礎と応用を紹介します。(メディカル経営問題研究所代表 須田稔)
ビジネス文は名文である必要はありません。逆に小説のように作者個々の文体が色濃く出た文章は、ビジネス文としては不的確であるといえます。「正確に、あいまいではなく、すっきりとしていて、組み立てがしっかりしている」文を書くことが基本です。そして「書く当人が伝えたいことを把握していること」「構成要素の取捨選択をすること」「キーワードを効果的に配置すること」「内容や表現を読み手に合わせること」などが不可欠となります。
まずは、主語と述語を分かりやすく組み立てる基本中の基本スキルを検証し、さらに普段何気なく使っている語句の本来の使い方を見直しましょう。
課長はA君がクライアントの担当者が的確なプレゼンテーションだとほめてくれたことをみんなに自慢しているのを見たといいました。
これは、非常に読みづらい文章です。「課長は」「A君が」「担当者が」と主語になりそうな3人の人物が登場します。読み手にとって、いったい主語が誰なのかがすぐには判断できません。また、それぞれがどの述語につながるかも分かりづらく、何度も読み返す羽目になります。
クライアントの担当者が的確なプレゼンテーションだとほめてくれたことを、A君がみんなに自慢しているのを見たと課長は言いました。
これでずいぶん分かりやすくなりました。「課長は」に対する「言いました」、「A君が」に対する「みんなに自慢している」、遠くに離れているそれぞれの主語と述語を近づけ、時系列に並べることで順番に「誰が何をしたか」が理解できます。さらにこの長いフレーズに1カ所「、」を入れたことで、だらだらした感じがなくなります。
読点の使い方にはルールがあり、いい加減に使うと文章の意味がうまく伝わらないこともあります。読点の役割は「前後の文のグループ分け」です。
次に、思わず誤った使い方をしてしまう語句の事例を挙げてみましょう。
昨日の総務部会議には、田中部長、小池課長、飯村と安藤らが出席した。
この「飯村と安藤」の「と」は、「田中部長」と「小池課長」の間に(つまり最初の名前の後)につけます。
昨日の総務部会議には、田中部長と小池課長、飯村、安藤らが出席した。
「〜は」と「〜が」の区別も覚えてください。名前などがはじめに登場するときは「が」、2回目以降は「は」を使います。
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