正確に分かりやすく伝える――ビジネス文書の基本ルール若手社会人のためのビジネス文書作成マニュアル(2/3 ページ)

» 2013年06月12日 08時00分 公開
[須田稔,月刊総務]
月刊総務

学校で習った「文法」をもう一度学習する

 文には「単文」と「重文」と「複文」の3つがあります。

  • 単文:「主語+述語」(課長が言った)
  • 重文:「主語+述語」、「主語+述語」(課長が指示をし、部下が従った)
  • 複文:「従属節・修飾句(主語・述語)、主節」(意見を求められると、私は緊張する。先月の会議の光景が、思い起こされた)

 ビジネス文書のセンテンスは「短く分かりやすく」が基本ですが、これをそのまま実行すると「単文」ばかりが羅列することになり、ただの「伝達」に近い薄っぺらで味気のないものになってしまいます。また単文同士を相互に関係づけないとお互いに孤立してしまい、読みやすくても理解しづらくなります。

例文

 B課長は部下の指導が上手だ。部下から信頼されている。


 この2文は孤立し、お互い関連はありません。文同士が結ばれていないので印象が分散されてしまいます。つまり、部下の指導が上手な結果、信頼を勝ち得ていると言いたいのか、部下の指導が上手なことと部下から信頼されているのが同列なのかの判断がつきません。そこで、ワンセンテンスによって読み手がすぐ理解できるよう以下のように修正します。

 B課長は指導が上手なので、部下から信頼を得ている。


あるいは、

 B課長は部下の指導が上手であり、信頼もされている。


このどちらかになるはずです。

 先に述べたように主語と述語を明確にし正しく配置して文の骨格を整え、重文・複文を上手に使いこなしてビジネス文書にあっても豊かな表現をすることで、相手は「なるほど」と納得感を得ることになるのです。

「だらだら文」をスリム化

 短文多用の注意点を述べましたが、反対に長すぎるセンテンスのだらだらとした文章の問題点を見てみましょう。

例文

 この企画書の改善点としては、データを多用しながらもそれが販促施策に反映されず、ユーザーへの説得力が弱いことが一番であり、広告と販促の施策が連動していない点も問題があり、その点を改善しない限りクライアントの評価を獲得するのは難しいのではないか。


 このような書き方をしているビジネス文書はよく目にします。読み手への配慮がなされていません。この文章で言いたい要素を分解してみましょう。

  • データが販促施策に反映されていないからユーザーへの説得力に欠ける
  • 広告と販促の施策が連動していない
  • その二つを改善すれば評価は獲得できる

 この3点が「言いたいこと」です。これらを半ば強引に接続詞でつないで1文に仕立てています。接続詞を多用している文章は多く、下手をすると「〜が」を1文の中に何度も使い、収拾がつかなくなっている文も見られます。基本的にはワンセンテンス・ワンアイデア(一文一概念)が原則です。

 この企画書の問題点は以下の2点。

  1. データを多用しながらもそれが販促施策に反映されていない。よってユーザーへの説得力が弱い
  2. 広告と販促の施策が連動していない。この二点を改善することでクライアントの評価は獲得できると思われる

 このようにすっきりとした文章に修正すると読み手が理解しやすくなりますが、まだ少し分かりづらい点があります。最後の「思われる」の使用です。ビジネス文書では「考えられる」「思われる」が多用されます。この場合「評価は獲得できる」と、言い切りの終わり方でさしつかえないでしょう。なぜなら「獲得できる」のは「私の推測」ではなく「事実」だからです。

 だらだらした文章はポイントを把握しづらく読み手に嫌われますが、最初は思いつきのままに書いて、後で読み返しの際に削って語句を入れ替え形を整えるという方法もあります。

例文

 先日行われた合同会議の参加者のほとんどが入社5年以上の人たちだったため、最初は迫力に圧倒されついていけるかどうか不安でいっぱいだったが、その分スキルだけではなく、精神面でも学ぶことが多く、そして実際の営業の現場では接客のスキルだけではなく、営業マンの人間性がものをいう世界なのだということをあらためて実感した。


 センテンスが長すぎ、不必要に長い文の印象を与えてしまいます。

 合同会議の参加者は5年以上のベテランがほとんどだった。そのため、最初は圧倒され気味で不安も兆したが、スキル・精神の両面で学ぶべきことも多かった。実際の営業現場では技術だけではなく、担当者の人間性が大切なのだということも実感できた。


 このように、センテンスを2つに分けてまとめます。注意すべき細かい点を挙げると、「言葉の重複を避ける」「回りくどい言い回しをしない」「余計な前段を述べず、核心に入る」「修飾語、つなぎの言葉(「まず」「そして」など)は極力省く」などです。

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