いくら熱心に企画書を書いても、採用されなくては意味がない若手社会人のためのビジネス文書作成マニュアル(1/3 ページ)

せっかくの良いアイデアや発想も、企画書や提案書の完成度が低くて採用されなかったというケースは少なくありません。課題はどこにあるのか、提案のねらいは何なのか、メリットやデメリットはどう予測できるのかなどを明確に記述することが大切です。

» 2013年06月19日 11時00分 公開
[須田稔,月刊総務]
月刊総務

 コミュニケーションの手段が、「相対して話す」から「書いて相手に伝える」へと移行してきています。ちょっとした用件でも電話でなくメールを使い、書き込みができるインターネットのさまざまなサービスは隆盛を極めています。読み手に正しく理解をさせ、好感を抱かせるビジネス文章のテクニックとはどのようなものか。その基礎と応用を紹介します。(メディカル経営問題研究所 代表 須田 稔

思考の出発点は「思いつき」

 企画の原点は思いつきです。最終的に採用される良い企画も、結局採用されなかったボツの企画も、最初は思いつきから生まれます。ですから、企画を次から次へと立てられる人は、思いつく能力、アイデアを出す感性力に優れていると言えます。「そういう能力は宣伝部やマーケティング部員が持っていれば良い」と思ってはいけません。営業にしろ総務にしろ生産セクションにしろ、仕事を今より良い状態に持ってゆくためには思いつき力が必要です。

 仮に「新製品Aの販促施策どうするか」というミーティングに参加するとします。あなたは飲料メーカーの営業セクションに属していて、新製品Aは高価格のビールだとします。

 さて、この施策のアイデアを3分間でいくつ出せますか? 最低でも10案は出したいところです。最初の思いつきの段階では質は問いません。重要なのは「数」です。

 「広告の大量投下」
 「小売店への訪問強化」
 「店頭での試飲によるデモンストレーション」

 このようなアイデアが出たとしましょう。アイデアはたったの3つですが、実は「視点」は「認知促進」というたった1つだけなのです。認知促進に凝り固まっていては、次の「思いつき」はなかなか出てきません。視点が動かないからです。アイデアを次々に生み出すには「視点」をいろいろと移動させなければなりません。

 例えば、認知促進の視点とは全く正反対な方向に移動させるとどうなるでしょう。

 「導入期では広告はあえて打たずに、口コミの広がりで商品価値を高める」
 「小売店での販売は行わず、通販のみとする」
 「一般ユーザーの試飲はせず、一流レストランのシェフのみに試飲を行い、評価をネット上だけで公開する」

 非常にクローズドな販促策ですが、これも商品の特性とマッチしていればアイデア出しのバリエーションとしてはアリでしょう。あえて、積極的に「認知しない」という視点です。それに、流通政策に的を絞って視点を移動させれば、アイデアのバリエーションは増えます。全く違うメーカーの商品とタイアップさせるという手はどうでしょう。その視点で考えれば、またアイデアがいくつかわくはずです。

 もちろん、このような思いつきはまだナマの状態ですから、この中から使えそうなものをセレクトし「ユーザーにとってどのような意味を持つか」を検証し、それを企画として強固なカタチにしてゆく作業に入ります。

仮説を立てる前に事実をきちんと検証

 いろいろな思いつきやアイデアは、何かの前提をもとに考え出す場合が多いはずです。例えば「新製品Aは高価格のビールだから、ターゲットを30代以上の富裕層としてプロモーション施策を考える」といったものです。

 ところが、前提とした仮説そのものが間違っていると、せっかくのアイデアもすべて水の泡になってしまいます。30代は本当に富裕なのか。確かに20代よりは収入が多いかもしれないが、結婚して家のローンや子供の養育に出費が重なり、むしろ消費を控える方向に行くのではないか。とすれば、独身の20代のほうがターゲットになり得るのではないか。 このような意見が出た場合、それを退ける根拠として「30代のほうが20代より高価格のビールを買う率が高い」というデータを示さなければなりません。要するに仮説を裏付ける事実の提示です。事実を掘り起こし検証を重ねれば、仮説と提案は変わる可能性があるのです。

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