とは言っても、マッキンゼー流の「問題解決」のスキルがどんなものなのか、まったくイメージできない状態で取り入れるといってもピンときませんよね。
ですので、まずは「問題解決スキル」の前提になるマッキンゼー流の思考を少し疑似体験してみましょうか。
ここに2つの情報があります。
果たして、この2つの情報はどちらが大切なのでしょうか?
もし皆さんが自社の新商品の売れ行きデータを眺めていたとして、「ふーん、売れ行き良いな」「なんだ、売れ行き悪いんだ」という感想しか持たなかったとしたら、ちょっと問題アリです。
実はこの2つの情報は大切そうで大切ではありません。マッキンゼー流に言えば、どちらの情報も「So What?(だから何?)」「Why So?(それは、なぜ?)」というところが抜け落ちているからです。
新商品の売れ行きが良くても悪くても、そこには必ず事実としての「要因」があるはずですよね。そして要因が分かれば、その対策も必要になります。
ということかもしれませんし、
かもしれません。
どちらにしても、この事実をもとに、何をアクションすべきなのか。そこまで考えてはじめて「情報」と呼べる、というのがマッキンゼーで入社1年目から叩き込まれた考え方です。
言い換えれば、先の見えない状況、正解のない問題に対して「さまざまな事実と情報から自分ならどうすべきか」という答え(具体案)を見つけ出すことが大切で、ただ情報を集めるだけではダメということです。
マッキンゼーは、世界中の会社や組織の「誰にも正解が分からない」問題解決を仕事にしてきた会社です。問題といっても、その中身は千差万別。答えがまったく見えない問題もあれば、答えがありすぎてどれが真の正解なのか分からない問題もあります。
あるいは状況が複雑すぎて、何が真の問題なのか分からない、ということすら珍しくありません。
例えば「日本経済再生の処方箋は何か」というような依頼を受けたとしても、「そんなことは分かりません」とは言わない集団がマッキンゼー。
どんな問題に対しても絶対に根気強く調査分析を行い、真の問題を特定し、そこから「こんな答えがあったのか!」とクライアントに身を乗り出させる解決を導き出すわけです。
しかもマッキンゼーには、いわゆる一般企業のような事業部はありません。「One Firm ポリシー」と呼ばれるように、世界中のすべてのオフィスが“One Firm”の境目のない1つの組織として運営されています。
すべてのオフィスで働くメンバーが、「クライアントのために」という共通の使命を共有しながら、同じ価値をクライアントに提供します。そのために、たとえ入社1年目であっても、「担当するプロジェクトのクライアント以上にクライアントの業界や業務のことを理解しろ」ということを求められるのです。
もちろん、新入社員がクライアントの前に出てプレゼンテーションをするわけではありません。何をするのかというと、パートナー(役員)が新たに開拓したクライアント、例えば自動車業界であれば自動車業界に関するパッケージ(資料)を70〜80枚ぐらいのボリュームで分析して、業界の将来像をシナリオにして用意するのです。
それも、ただいろいろなところからデータを引っ張ってきただけではダメです。「なんのつもりだ?」と冗談めかして突き返されるのがオチです。
冒頭でお話ししたように、「そのデータからどんなことが想定できるか」という分析ストーリーまで用意できていて、初めて「ありがとう」と言ってもらえるわけです。
入社1年目の新入社員が、そんな仕事を? 「信じられない」と思われる人もいると思います。実際、それはかなり過酷なことなのですが、マッキンゼーの社内には、なぜか不思議と「厳しいのは当たり前」という空気が流れていて、「やるしかないよね」という気分にさせられました。
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