「企画書用のアイデア、どこいった?」「大口契約が取れたときのプレゼン、どうやった?」「このクレーム対応、どうすればいい?」――こうした社内固有のノウハウをすっきり整理し、簡単に共有できるのが「Talknote」だ。
会社の中には宝の山がある。このお宝は将来、お金を生み出す可能性があるにも関わらず、多くの会社で眠ったままになっている。掘り起こされ、磨かれることなく放置され、その在りかすら共有されていないからだ。
ここでいうお宝は、社員のアイデアや仕事を通して得た知見の数々。こうした情報は社員のメールソフトや個人のPCだけに保存され、なかなか共有されることはない。
Talknoteは、そんな社内に眠る情報を集約し、磨き上げて仕事に役立つ情報に変えていく手助けをするコミュニケーションツールだ。LINEやFacebookのようにIT初心者でも使える分かりやすいUI、リーズナブルな料金体系を武器にシェアを急激に伸ばしている。このサービスの特徴についてトークノート 代表取締役の小池温男氏に聞いた。
仕事の情報は、ともすればあちこちに分散してしまいがちだ。同僚や取引先とやりとりする中で発生した情報はメールソフトの中にあり、売上の進捗やプレゼン資料は自分のPC内に、社内プロジェクトのやりとりは会社の共有フォルダの中、ふと思いついたアイデアはスマホのメモやクラウドストレージに――といった具合だ。
こうした情報をいざ取り出そうと思っても、すぐ保存場所を思い出せず、時間をロスしてしまったり、諦めたりしたことがあるのではないだろうか。
Talknoteはこうした情報を1カ所に集約し、グループ分けして管理できる。“重要な情報はTalknote上に置く”と決めて、クライアント別、目的別のグループを作成して投稿すれば「あの情報、どこにいったっけ」と迷うことがなくなる。
「B社の部長は、こう説得すると効く」「A社のプレゼン資料は、こんな情報をそろえておくと喜ばれる」「C社のクレーム対応はこんなアプローチで」――。Talknoteは、こうした社内の知恵や知見を簡単に他の社員と同僚と共有できる。
例えば「○○社の営業進捗管理」というグループを作成し、同じクライアントを担当しているスタッフ同士で情報を共有すれば、互いの進捗を確認しながら営業活動ができる。また、商品別のクレーム対応グループを作成し、そこにうまく解決できたときのアプローチや話法を投稿しておけば、クレーム対応に困ったほかのスタッフにも役立つ情報になる。さらにいい方法が見つかったら投稿にコメントを残しておくことで、洗練されていくというわけだ。
せっかくいいアイデアを思いついたのに誰に相談したらいいか分からず、そのままになってしまう――これもよくある話だろう。こんなときに、例えば「仕事のアイデア」というグループを作成し、同じ部署のスタッフや意見を聞きたい社内スタッフをグループに招待しておく。アイデアを思いついたときに、このグループに投稿すれば、アドバイスをもらったり、「いいね」で応援してもらったりできる。こうするうちにアイデアが磨かれ、提案や企画に生かせる形になる。
予算が達成できない、プロジェクトが思うように進まない、顧客からのクレームが絶えない――。こうしたトラブルの根は、「チームの目標が共有されていない」ことだったりする。それは「目的地が分からないままひたすら歩かされるのと、目的地と現在地を把握しながら歩くことの違い」(小池氏)と考えると分かりやすい。
例えばTalknoteのグループに「チームの目標」というグループを作成し、それに対する思いや進ちょくをチームのメンバーが書き込むようにすれば、“今、この時点で自分は何をするべきなのか”が可視化され、チームをまとめやすくなるだろう。
また、同じチームのメンバーだけで仕事を進めていると、アイデアや提案に新鮮味がなくなってしまうことも多い。そんなときに、他の部署の人や支店・支社の人と話してみると、視野が広がって新しいアイデアを思いつくことがある。しかし、相手の席に向かうのは面倒な上、相手にも都合があるのですぐ話せるとは限らない。他店や支社のスタッフとなると、さらにコミュニケーションのハードルが上がってしまう。
Talknoteは、そんなちょっとしたコミュニケーションにも役立つ。製品ごとや案件ごと、業務ごとのグループを作成し、困っていることを書き込んでおけば、関わりのある他の部署、他の支店・支社の人からの回答を期待できる。普段、なかなか会う機会がない人との接点づくりに一役買ってくれるだろう。
小池氏がTalknoteの強みとして挙げるのは、「IT初心者でも迷わず使える分かりやすさ」だ。社内情報を共有するためのWebサービスやツールは、数多くリリースされているが、ITリテラシーの高低にかかわらず使いやすいサービスは限られているという。機能が多すぎてどれを使ったらいいのか分かりづらかったり、メイン画面にアクセスしたときに「まず、どこを見たらいいのか」が分からないサービスが多いからだという。
Talknoteは、ITに不慣れな人でも使えるようユーザーインタフェースに工夫をこらしている。その理由は、サービス開始当初のメインターゲットが、飲食業界だったためだ。前職で飲食業との関わりが深かった小池氏は、IT機器に不慣れな人が多い飲食業界の人でも迷わず使えるUI開発を目指し、それを徹底させたという。
その結果生まれたのが、画面の左にグループ、中央にタブ形式のタイムライン、右に機能や通知が表示されるという画面構成だ。左カラムのグループではテーマや目的から社内情報にアクセスできる。中央カラムは全ての情報を時系列で見ることができるほか、自分が常に更新状況を確認したい情報や、他のスタッフが「いいね」をつけた情報も時系列で追える。右カラムでは、参加メンバーを確認したり、自分がチェックしているスレッドの最新情報や「いいね」をつけた情報を確認することが可能だ。
どこを見たらいいか分からないという初心者でも、まずは「いいね」がついた情報やチェックを入れた情報を見るところから始めて、慣れてきたらほかの情報を見るようにする――という使い方ができる。機能を羅列するのではなく、目的から情報にアクセスできるようにしているところが使いやすさにつながっているといえるだろう。
Talknoteは、無料版で一通りの機能を試してから導入を検討できる。無料版では(1)1日の投稿・コメント・メッセージの上限が20件まで (2)同じ企業ドメインで利用できるストレージ容量が200Mバイトまで (3)投稿やファイルの保存期限が3カ月などといった制限があるが、利用期限は特に決まっておらず、使用感を試すのには十分だろう。
有料プランはストレージ容量やセキュリティの強度に応じて、月額380円/ユーザーの「Talknote」、月額980円/ユーザーの「Talknote for Business」、月額1980円/ユーザーの「Talknote 専用サーバー」の3種から選べる。
無料版も含め、2013年10月末時点で約1万社がサービスに登録している。導入企業には飲食大手のエー・ピーカンパニーやエムグラントフードサービス、通信キャリアのKDDIらが名を連ねている。
トークノートの社内では、もちろんTalknoteを使って情報を共有しているわけだが、ちょっとユニークなグループがある。「ロミオ」と「おやつ」だ。
ロミオは小池氏の愛犬で、毎日「出勤」している社内のアイドル的存在。社内を歩きまわって愛嬌を振りまき、疲れると社員の足元で眠りこんだりするなど、その愛くるしい姿が社員の癒しの元になっている。同社では、そんなロミオの様子を社員が激写し、一言添えてポストするのが流行っているという。スマートフォンからアクセスすれば、外出先からでもロミオの姿を見て和めるというわけだ。
おやつは、その日に誰かが持ってきたおやつの写真が並ぶグループ。来客などからもらったお菓子を投稿をしているうちに、いつからか社員が自ら持ってきたおやつの写真を投稿するようになり、今やおやつがたえないオフィスになったそうだ。
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