政府は、2020年までにテレワーク導入企業を3倍にする方針を打ち出し、そのための助成金も交付している。テレワークを重視するその背景には何があるのか?
安倍内閣が「残業代ゼロ」方針を決定した日、もう1つ重要な閣議決定がなされた。それは2020年までに日本を世界最高水準のIT活用の国にしようという取り組みの強化だ。
その方針を示す「世界最先端IT国家創造宣言」の改訂版(参考リンク)には、「失われた20年」に終止符を打つべく、さまざまな分野で積極的にITを活用していこうという取り組みが紹介されている。その注力分野の1つに挙がっているのが「テレワーク」だ。
同宣言では、
という2つの数値目標を掲げている。
しかし、現実に目を向ければ、テレワークの導入が進んでいるとは言い難く、行政は今、導入を支援する助成金を用意してテレワークの普及に弾みをつけようとしている。
“人材不足”が叫ばれているにもかかわらず、テレワークが普及しないのはなぜなのか。オフィスに縛られないテレワークを導入することの意味と課題、助成金の活用方法をコンサルタントに聞いた(本稿は、7月5日に開催されたセミナー「助成金活用で、クラウド導入は今がチャンス! テレワーク、在宅勤務導入セミナー」の内容をまとめたものです)。
まずはテレワークの現状についてデータで見てみよう。在宅勤務制度を導入している企業は全体の約1.9%に過ぎない。会社の規模別で見てみると資本金50億円以上の企業では10社に1社の割合で導入が進んでいるが、資本金1000万円以下の企業では0%、つまり数字に表れないほど導入が進んでいない。また、導入企業であってもテレワーク制度を利用している従業員の割合は5%未満という企業が半数以上というのが現状だ。
「『テレワーク』とは、その名のとおり、離れた場所(テレ)で働く(ワーク)ということ。しかし、その言葉の意味が広すぎて正しく理解されていない」というのは、テレワークマネジメントの田澤由利さんだ。田澤さんは22年間にわたってテレワークに関するコンサルティングを行っており、2013年12月には安倍首相にテレワークのさらなる推進を進言している。
では、「テレワーク」の定義とはどのようなものか? 田澤さんは、テレワークを「雇用型」と「自営型」、「モバイル型」と「在宅型」の2軸に分けて、それぞれの特徴を説明する。
例えば、雇用型でモバイル型なテレワーカー。ここには、ノートPCやスマートデバイスを活用して客先で仕事をする「営業担当者」や「出張者」などが含まれる。自営型でモバイル型であれば、「ノマドワーカー」や「SOHO/フリーランス」というわけだ。このように考えれば、テレワークが身近なものに感じられるかもしれない。
一方、多くの人がテレワークのイメージを持つ「在宅勤務者」は、雇用型で在宅型。日本政府は、介護や子育てをしながら自宅で働く「雇用型在宅型テレワーカー」が働きやすい環境を整え、全労働者の10%以上にしようとしている。
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