もう1つのボーダレスは、「日本」にとらわれないで働く、すなわち「海外で働く」ということです。すぐに「海外赴任」が思い浮かびますが、違ったやり方でチャレンジする人の数も増えています。
“海外就職研究家”の森山たつを(もりぞお)氏の「セカ就!世界で就職するという選択肢」に象徴されるような「海外で直接現地の会社に勤める」やり方が注目を集めています。ほかにも日本企業の現地採用も増えていて、海外で働くことは私たちにとってより身近なチャレンジとなりつつあります。
さらには、シリコンバレーなどさまざまな場所で“起業”して海外で働く人、日本にいながらインターネットを通じて海外の人々を相手に仕事をする人など、海外で働く、あるいは海外と働くチャレンジをする人の数も少なくありません。
2030年という未来を考えると、日本国内の人口減少は避けられません。「海外で働く」「海外と働く」機会はますます現実的になっていきます。
一方、海外で働くことは決して簡単なことではありません。海外赴任をした日本人社員が現地法人では管理職に就くなど、国内でのポジションよりも1つ、2つ上の地位で働くことが多いと指摘されています。つまり、高いポジションに就くことと海外の人と一緒に仕事をすることという2つのチャレンジに同時に直面することになります。
いきなり大きなチャレンジに直面すれば、失敗することは当たり前です。そう考えれば、たとえ失敗があったとしても、今からできる小さなチャレンジを積み重ねておくことは未来に向けての経験と能力の蓄積となります。
最近は、若者を対象とした意識調査などで「海外志向が低下している」と指摘されることもありますが、改めて海外で働くというチャレンジを前向きに考えてみる必要があるかもしれません。
今回は、「1つの会社」、そして「日本」にとらわれないという2つのボーダレスな働き方、学び方を取り上げました。日々の仕事が忙しい中で、これらは時間的にも心理的にもハードルが高いことかもしれません。しかし、プロボノ、二枚目の名刺、週末起業、海外赴任など、今の仕事をしながらできるチャレンジはたくさんあります。
これらは、「日々、日本で普通に仕事をする」だけでは得られない経験を私たちに与えてくれます。そこでの学びは、今の私たちにとって重要であるだけでなく、2030年、またその先の未来の私たちにとっても貴重なものといえます。
もちろん、今の仕事にとらわれず、自分の力を生かす場を持つことは、私たちの「貢献意欲」、そしてその結果得られる「効力感」を満たすものにもなります。
国内人口減少や少子高齢化の進む日本で、場合によっては日本以外の場所を選択して長い期間働き続ける。そのためにできる「今の自分ならではのチャレンジ」の選択肢は無数にあり、ボーダレスな一歩を踏み出すかどうかが、今後のビジネスパーソンを分けるものになるかもしれません。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 主任研究員/ 2002年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻にて修士課程(学術)修了後、株式会社人事測定研究所入社。アセスメント、トレーニング、組織開発の商品開発・研究に携わり、現在はマネジメント、リーダーシップ等に関する研究や実態調査に従事する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.