クラウド会計のマネーフォワードが、法人向けPCソフトでソースネクストと組んだ理由とは?

法人向けPCソフト約100本が月額980円程度で使い放題になる「超ホーダイ Business」をソースネクストが11月からスタートする。そのラインアップに「MFクラウド会計」が入った狙いを聞いた。

» 2014年10月29日 16時30分 公開
[Business Media 誠]

 ソースネクストは、法人向けPCソフトの使い放題サービス「超ホーダイ Business」を11月から提供する。ウイルス対策ソフトやPDF作成ソフトのほか、マネーフォワードが提供する「マネーフォワード法人会計」「マネーフォワード確定申告(青色申告・白色申告)」など約100本でスタート。月額利用料金は980円程度(税抜)を予定している。

 2014年6月から、コンシューマー向けPCソフトで同様の取り組みを行う「超ホーダイ」を展開中の同社。松田憲幸社長によれば、売れ行きは好調だという。「超ホーダイがヒットし続けるためにはコンテンツの力が重要。自社開発のものもあれば、世界中から良いソフトを探し出してくるのがソースネクストのやり方だ。超ホーダイ Businessでは、1年間で1万社の導入を目指す」(同氏)

超ホーダイ Business ソースネクストの松田憲幸社長(左)とマネーフォワードの辻庸介CEO

なぜ「MFクラウド会計」が参加したのか?

 「超ホーダイ Business」に、クラウド会計ソフト2種類を提供するマネーフォワードの辻庸介CEOに、その狙いを聞いた。

――クラウド会計ソフトを展開していますが、ソースネクストからパッケージソフトの形で販売していますね。

MFクラウド会計

辻CEO(以下、敬称略): 2014年9月から、ソースネクストを通じて全国の量販店で販売しています。箱の中にはマニュアルとクラウドサービスのURL、IDとパスワードが入っているだけで、実際には「マネーフォワード法人会計」「マネーフォワード確定申告(青色申告・白色申告)」にアクセスして使う形になります。

――超ホーダイ Businessに参加した狙いは何でしょうか?

辻: マネーフォワードは開発者集団ですから、サービスを作るのは得意なのですが、販売面では力が及ばない部分もありました。ソースネクストを通じて販売することで、私たちがリーチできないお客さんに「MFクラウド会計」を届けられると思っています。私たちは、より良いものになるように開発に集中できます。

 すでに「MFクラウド会計」や「MFクラウド確定申告」を自ら積極的に利用している個人事業主や法人は、アーリーアダプターと言えます。また、その多くが税理士や特定の業界向けの経営支援企業のオススメによって導入を決めている。これからは会計ソフトに限らずクラウドサービスの普及は加速するでしょう。

 ソースネクストの松田社長も言っていましたが、法人向けソフトは非常に高価です。また一方で、多くの中小企業は、さまざまな良いソフトやサービスがあっても使えていないという状況もある。なぜなら、そもそも目に入っていないからです。超ホーダイ Businessを通じて、全国の小規模法人が良いソフトを安く使えるようになれば、業務が効率化して、利益が上がり、そして景気も良くなる。そこに貢献したいと思います。

――会計ソフトのような業務ソフトは、「ビジネスが回っていれば、今使っているものを変える必要がない」ジャンルだと思います。そこをあえてクラウド化する理由がユーザー側にあるとすれば、何でしょうか?

辻: クラウド会計ソフトを導入のメリットは大きく3つあります。1つ目は、入力の自動化による作業効率の改善。2つ目は、WindowsだけでなくMacやタブレットでも使えること。3つ目は、複数の関係者で協業できる点です。

 例えば、多くの中小企業の会計業務は税理士の助けがなければ、事実上、まわりません。クラウド会計ソフトを使う人は特に顕著ですが、自力で何とか終わらせようと考える人が多い個人事業主と比べると大きな違いです。

 MFクラウド会計を導入した企業を担当する税理士から聞いたのですが、1事業所当たりの税理士事務所のオペレーションコストは25〜35%程度削減できるのだそうです。例えば、クラウド会計ソフトであれば書類の修正があっても、わざわざ訪問しなくてもネット越しでパッと直せます。

――「MFクラウド」シリーズには、会計ソフトだけでなく請求書作成・送付サービスもあります。会計ソフトと同様に、中小企業の業務効率化に役立つサービスですが、これが「超ホーダイ Business」に入らなかった理由は?

辻: これまでβ版として提供していた「MFクラウド請求書」ですが、10月27日に正式版がリリースとなりました。今回の発表に間に合わなかっただけという単純な理由です(笑)。今後、どこかのタイミングで追加できると思います。

 他社の同様のサービスを見ていると、クラウド請求書サービスはフリーランス向けに作られているという印象があります。マネーフォワードが支援したいのは、中小企業の業務改善です。そのため「MFクラウド請求書」には、複数人で使う機能、CSV形式でファイルを一括取り込みする機能、定期請求業務を半自動化する機能などを投入しました。次は、決済まで対応できればと思っています。

 また、2015年2月ごろには、給与計算ソフトや経費精算ソフトも投入すべく開発を進めています。特に給与計算ソフトは、従来型のソフトをクラウド化しただけではつまらない。新しい切り口を打ち出していく予定です。

 私たちは、中小企業の一連の業務をラクにしたいと思っています。それはテクノロジーがあれば何とでもできるはずです。そして、既存の商習慣を超える便利さを提供できれば、世の中の仕組みの方が変わっていくはず。そのためにも、現行の業務オペレーションをしっかり理解したうえで、ユーザーが本当に求めているものを見極め、地味にイノベーションを起こしていきます。

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