どんなに仕事ができる人でも、プロジェクトが止まってしまうことがあります。例えば、仕事を依頼した相手が締め切りまでにタスクを終わらせてくれない場合、どうしたらいいでしょうか?
仕事ができる人にでもつきまとう、かなり厄介な問題があります。「関係者が進めるべき仕事を進めてくれない」という問題です。ナレッジワーカーの仕事術ともいうべき「GTD(Getting Things Done)」でもこの問題は扱われています。
対処法の1つは、「ウェイティングリスト(待機リスト)」に「任せた仕事」を入れておくという考え方です。チームで仕事をする場合には、これは非常に大事です。少なくともリスト化くらいはしていないと、「任せた人がまったく仕事を進めていなかった」ときに窮地に陥ります。そのとき困るのは任せた人であって、任された人ではないはずです。
この問題が難しいのは、自分ではどうにもできないところがあるからです。仕事ができる人なら自分の仕事の片付け方は知っているし、それらの進捗を徹底して管理すればいいわけですが、仕事を任せた相手が同じようにできる人だとは限りません。
残念ながら、仕事術を扱う書籍などでこの手の問題が必ずしも取り扱われることはありません。なぜならば、仕事術の本というのは「自分がちゃんとできる人になる」ことを目指すものであって、「他人に仕事をちゃんとさせる本」ではないからです。
そこで、少し古い本ですが、カール・P・ワージーの『奇跡の仕事術』を紹介したいと思います。これは、「自分が仕事のできる人になる本」でありながら、「他人に任せた仕事を管理する方法」にも章を割いていました。
真っ先に読むべきは第3章の「ペンディングシステム」です。ここで書かれている「公約日を手に入れる」ということは、非常に大事なポイントです(自分自身との約束を自分が守るためにも重要です)。
「公約日を手に入れる」とは、「いつやってくれるか?」という問いに日時で答えてもらうものです。多くの人は「いつ」という質問に対して、具体的な日時で答えたくはないものです。それはプレッシャーになるからです。
ほとんど無意識のうちに、次のように答えることでしょう。
「2〜3日中に」という答えをそのまま受け入れてしまった場合、2〜3日中に仕事が終わることは難しいでしょう。もしかすると、覚えておいてもらうことすら困難かもしれません。そうはいっても、「すぐに」と答えている相手に向かって、「すぐっていつ?」とは聞き返しづらいのも分かります。
「ボブ、これに関する情報を“いつ”くれるんだい?」
このコミュニケーションは、意地の悪いものでも、気が引けるものでも、失礼なものでもない。相手が誰であろうと、快く、微笑みながら、「この件に関する情報を“いつ”いただけますか?」と言えばいいのだ。簡単である。あなたが聞いているのは公約日なのだ(『奇跡の仕事術』)。
ワージーはこう書きますが、これを実行するとなると、快くないですし、簡単でもありませんし、意地悪な感じもしますし、当然気が引けますし、失礼な感じもします。
それでも、「いつ」を問いただす価値は確かにあるのです。相手がきちんと期日までに仕事を仕上げる人であっても公約日を手に入れることはベターですし、相手が期日までに仕事を間に合わせないのであればなおのことです。
特に後者であれば、なるべく公約日を守らせるための努力もしなければならないでしょう。つまり、公約日までに仕事の進捗を確認するためのリマインダーをセットして、相手に連絡を入れ、ときにはせかすことも全部「自分のタスク」となります。
こんな手間をかけるのは気が重いのですが、それをやらずに痛い目を見るのは自分です。リマインダーはその現実を自分に思い出させるためのものでもあるわけです。
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。
ブログ「ライフハック心理学」主宰。
TwitterID:@nokiba
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