“褒められてこなかったオレたち”は部下を褒められないのか?上司はツラいよ(1/2 ページ)

“褒め上手”になりたいけれど、どう褒めたらいいのか分からない。そんな上司は案外多いものだ。ではいったい、どうすればいいのか……。その答えは「無理に褒めようとしない」という“逆転の発想”にあった。

» 2014年11月28日 09時10分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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 今から5分間、「自分の部下を褒めるとしたら、どんな言葉をかけるか」をできる限り多くイメージしてみてほしい。

 いかがだろう。あなたはどんな言葉をどれくらい思いついただろうか。最初の3つ、4つでネタ切れになったとしても心配ご無用。案外そんな人は多いのだ。マネージャー向け研修のブレインストーミングで「“褒め言葉”を挙げてみよう」というワークをすると、“褒め上手”な上司が意外と少ないことが分かる。

 このワークは、「昔、自分が褒められたときにかけられた言葉」「現在、自分が部下にかけている褒め言葉」を、できるだけたくさん書き出してみようというものだ。まずは個人個人が褒め言葉を書き出し、それを4〜5人のグループで共有。さらに多くのアイデアを出し合って数を増やすという方法で行う。

 「もし1人では3個ぐらいしか思いつかなくても、5人なら15個(3個×5人)、ブレインストーミングで増えれば20個くらいにはなるだろう」――。そんな風に思っていたのだが、なかなかそうはいかない。

 個人で考える段階で、2つくらいしか褒め言葉が出てこない。それを5人で突き合わせても、同じ言葉を挙げる人がいるため10個にも達しない。そこからブレインストーミングで増やそうとしても、1〜2個追加された時点でぴたっと発言が止まり、全員で「うーん、うーん」とうなるばかりになってしまった。

褒め言葉が浮かんでこない……いったいなぜ?

 よくやった、さすが、偉い、すごい、すばらしい……他に何がある?

 マネージャーたちが「もう思いつきませんねぇ」と顔を見合わせた時、1人がぼそっとつぶやいた。

 「俺たちさ、褒められてこなかったから、褒め言葉が全然出てこないんじゃないか?」

 すると、ほかの人も口ぐちにこう言い始めた。

「そうだよなぁ。褒められることなんかなかったし」

「今も褒められないもんなぁ」

「そうだよなぁ」

「うーん」

 私も一緒になって「うーん」とうなってしまった。詳しく聞くと、顧客に感謝されることはあるものの、直接の仕事仲間である上司や先輩となると、叱られたりダメ出しされたりした経験はあっても、褒められた経験は本当に少ないのだという。

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 確かに、褒められて自分がやる気になった経験がなければ、「自分が褒めたことで部下がやる気になる」という状況は想像しにくいだろう。しかし、だからと言って部下のモチベーションを上げられないというのもよくない。これは上司としてはかなりツラい状況だ。

 人は、自分が育てられたように他者を育てる傾向がある。例えば、厳しく指導されてきた人は自分の部下にも厳しく接し、ハードな仕事を乗り越えてきた人は部下にもハードな経験ができる仕事をアサインする。放置されてきた人は、それが嫌な経験だったにも関わらず、部下を放置してしまうケースが案外多い。

 中には、そんな上司や先輩を反面教師として、自分が上司になったら全く逆の接し方をする人もいるが、育て方、接し方のパターンは自分の経験をベースに構築されるため、たいていの場合は、上司にされたのと同じような指導方法になりやすい。

 とはいえ“褒められなかったこと”を嘆いても、褒め言葉は出てこない。ならば、いったいどうやって“褒め言葉”を見つけていけばいいのだろうか。

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