なぜ仕事が終わらないのか。「今日は思っていたより時間がかかっただけ。明日になれば時間はできる」。そんなハズがあるわけないのです。
筆者の仕事仲間や仕事術について相談する人は、平均的な人よりずっと几帳面で、仕事の納期を守る人が多いのですが、それでも締め切りをオーバーすることがあります。これは誰にでもあり得ることとはいえ、やはりそれでは済まされません。少なくともストレスになるわけです。
今回は、特に長期的なプロジェクトにおいて守りやすそうな締め切りを設定する方法を考えてみましょう。筆者は「タスクシュート時間術」を推奨しています。その大きな特徴の1つは、タスクにかかる時間を見積もることです。
チームプロジェクトにはたくさんのタスクがあります。まずはタスクそれぞれが完了するまでの時間を見積もります。次にすべてのタスク、あるいは時間がかかりそうなタスクだけをピックアップして、その時間を足し合わせます。
時間の見積もりは正確でなくてもかまいません。それでも、タスクを完了させるまでの総時間が分かれば、「締め切りまでにはとうてい間に合わない」とか、「今すぐ取り掛かればギリギリで終わる」といったことが具体的に見えてきます。
ほとんどの人が陥りがちな大きなワナを意識して避けなければなりません。それは「未来にはもっと時間がある」と思わないことです。明日の長さは今日と同じだけしかありません。来週の長さは今週と同じです。「時間のある日」というものは向こう10年間は来ないものと思うべきです。
もう1つ、「未来の自分は今日よりももっと元気だ」と思わないこと。私達は未来について楽観的なのです。最近では心理学者も指摘するようになりました。しかし、元気さも時間と同じこと。明日の自分は今日と同じくらいしか元気ではありません。たぶん、くたびれきっているでしょう。
でも、仕事は時間もなく、くたびれきっている中でこなしていくしかないものなのです。
プロジェクトをタスクごとに小さく分け、完了までの見通しが立ったら、他人、できれば仕事の同僚にチェックしてもらいましょう。仕事にかかる時間は、自分よりも他人のほうが正確に知っているからです。
これについても心理学者が研究しています。他人は、あなた自身と違って必要以上にあなたのことを優秀だと思わなくても傷つきませんし、そう思うことで得られるメリットも特にありません。だから、あなたのことをよく観察していなかったとしても判断は冷静で客観的です。
人はタスクにかかる時間をどうしても短く見積もりがちになります。その方が自分が優秀な気がするし、仕事が早く終わる“ことになる”のでハッピーな気持ちになれるからです。
タスクの集合体であるプロジェクトについても、人はどうしても日数を少なめに見積もりがちになります。上記の理由に加えて、外部からの「プロジェクトを早めに終わらせてほしい」というプレッシャーもあります。だから、絶対に守れそうもない締め切りを示されても「まあそのくらいあれば、何とかなるかも……」と思ってしまうのです。
もっとも現実的な計画を立てたところで、それによって締め切りを絶対に破らないという保証はありません。しかし、現実的な計画に沿って仕事を進めておけば「予定どおりに終わる」という安心感が得られます。この安心感こそが、満足のいく仕事をこなしていくうえで何よりも大事なことなのです。
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。
ブログ「ライフハック心理学」主宰。
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