アサーションの具体的な技法の1つに「DESC法」という手法があります。
頭文字 | 手法 | 説明 |
---|---|---|
D | 描写する(describe) | 現在の状況や相手の行動を客観的に描写する |
E | 表現する(express)、説明する(explain)、共感する(empathize) | 描写したことに対し、自分の気持ちを表現、説明し、相手に共感する |
S | 特定(specify)の提案をする | 状況を変えるための具体的、現実的な解決策や妥協策を提案する |
C | 選択(choose)、結論(consequence) | 提案が受け入れられたとき、受け入れられないときの結果を示す |
例えば、鈴木さんが佐藤さんに明日までに顧客に提出する商品資料の作成を依頼しようとしますが、何だか佐藤さんは気乗りしないようです。
鈴木さんが非主張タイプならば「お忙しいそうなので結構です。すみません」と伝え、それ以上の主張をあきらめます。反対に攻撃的タイプならば「こっちが頼んでいるのにふざけるな」となります。
では、アサーションタイプだったらどうでしょうか? 以下のように伝えることでしょう。
鈴木: お客さまから明日朝一での資料提出を求められていて(D)、私としてもお客さまに満足いただくために資料ができていれば大変うれしい(E)。佐藤さんも先約の仕事も抱えて大変だと思いますが、何とかお願いできますか(S)?
佐藤: お昼までであれば何とかやってみましょう。
鈴木: 分かりました、ありがとうございます。お客さまにお話ししてお昼まで待ってもらうよう交渉します(C)。
DESC法で重要なのは、D(描写)とE(表現)をきちんと分けることです。Dは客観的な描写で、相手にすべて共有できる事実でないといけません。そこに主観的な感情が入ると相手と共有できなくなります。
また、相手に提案を断られることが怖いがために、相手が受け入れやすそうな提案をすると、自分の要望が置き去りになってしまいます。そこで、相手が「NO」と言ってきたときに自分がどういう行動をとるかをあらかじめ想定しておきましょう。ゆとりをもって対処できます。
上記の例のように、いきなり筋道だって話すのは難しいかもしれません。しかし、DESCのようなフレームを使って内容を整理することで、自信をもって自分の主張を伝えられるようになります。
私たちの分析では、「社会的自己意識」「感情的被影響性」「自己主張性」は統計的に意味のあるレベルでストレスレベルと関連しています。ロボットやコンピュータにできる仕事をすべて任せたとしても最後まで人と人が関わる仕事は残ります。人間関係にうまく対処することの重要性はどんどん高まっていくでしょう。ストレス原因を減らして気持ちよく仕事をし成果を出すために、対人技法をブラッシュアップしていくことがこれからのビジネスパーソンにはより一層求められそうです。
アドバンテッジリスクマネジメント 取締役 常務執行役員
東京大学法学部卒業、文部省(現文部科学省)入省。2001年にアドバンテッジリスクマネジメント入社。経営企画を中心に、メンタルヘルスケアや就業障がい者支援などの分野で現在の事業の柱を作る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.