「文字数の制限」が生んだ300年間のドラマ:Biz.ID Weekly Top10
新聞や雑誌に比べて文字数の縛りが少ないWebメディア。さまざまな利点があるのはもちろんだが、「縛り」がなければ生まれなかったストーリーもまたあるのではないか。
ITmedia Biz.ID Weekly Access Top10
2009年07月14日〜2009年07月20日
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先週のBiz.IDでは、13種類の耳栓を比較したレビュー記事が最も多くのアクセスを集めた。記事では「睡眠時のオススメ」と「仕事時のオススメ」を合わせて紹介しているので、参考にして自分好みのものを見つけてほしい。
雑誌で短いコラムやエッセイなどを読んでいると、話が面白くなってきたな、というところで「――と思ったら残念ながらここで紙面が尽きた。語りたいことはいろいろあるが、続きはまた次の機会に」なんて風にオチを付けている文章を見かけることがある。
これは、読者の興味を長続きさせるためだったり、事情により話の核心に触れられない場合に使ったりする“口実”のテクニックなのだろうが、Webメディアの記者としてはなかなかマネしにくいやり方でもある。Webメディアは新聞や雑誌と比べて紙面の(=文字数の)制限が少ないため、「語りたいならお好きなだけどうぞ(※ただし読者がいる場合に限る)」ということになってしまうからだ。
もちろん、文字数の制限が少ないことには良い部分もあるわけで、Business Media 誠の「(ほぼ)完全収録」シリーズなどはこの利点をフルに生かしたものである。イベントや記者会見の内容を詳しく知りたいという人にとっては、文字数やページ数に縛られずに情報を受け取れるということが大きな価値となるはずだ。
では、この「紙面の都合で書けません」問題で、歴史上もっとも多くの人を悩ませてきたのは誰か。筆者が知る限りでは、それはピエール・ド・フェルマーだろう。かの有名な「フェルマーの最終定理」を残した、17世紀フランスの数学者である。彼は後に“最終定理”と呼ばれることになる数学的予想について、数学書の余白に「驚くべき証明を見つけたが、それを書き記すにはこの余白は狭すぎる」とだけ書いた。そして、そのままこの世を去ってしまった。
多くの数学者の研究成果を積み上げて、アンドリュー・ワイルズ教授がこの定理の証明に成功したのは1995年のこと(そのドラマチックな過程は、サイモン・シン『フェルマーの最終定理』に詳しい)。人々は「フェルマーが書かなかったこと」を、実に300年以上に渡って追い求め続けたのである(ただし、話によると当のフェルマー自身は考え違いをしていて、実際には本人はこの定理を証明できていなかったらしい)。
当時、自由に文章を書き記せる余白があったとして、果たしてフェルマーは考えを明らかにしていたのだろうか。その証明の誤りが判明したところで、後世の人々は再度証明に乗り出そうとしただろうか。そんなことをWeb時代の現代に考えてみるのも趣深い――と、筆者なんかは思うのだ。
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