覚えなければいけないことの多さに、疲れてしまっていませんか?:説明書を書く悩み解決相談室(2/2 ページ)
「説明書を書く」のは、その分野をよく知っている人とは限りません。「雑多な情報を取捨選択し構造化して自分の言葉で表現する」ことは、自分自身の理解を深めるためにも非常に役に立ちます。今回はそんな「自分が理解するために説明書を書く」時のコツを考えてみましょう。
極限まで要約してあれば、間違ったことを書いても構わない
ただし条件があって、それはよく考えた上で要約して書くのであれば、間違っていてもいいということです。最初からいいかげんにやって間違えるのはダメですが、真剣に考えて、短く要約して、その結果の間違いは何の問題もありません。というのは、その場合は「間違いを修正する機会が得られる」からです。
そもそも人間は間違えるものです。だから、ちょっとやそっと間違い、誤解があっても、それを正す機会があれば問題ありません。そのために大事なのが、「よく考えて要約してあること」です。
短く要約したものに間違いがあれば、その問題に詳しい人に見せたときに、すぐに「あ、これ間違い」と教えてもらえます。単純な話で「間違っているところがあったら教えてください」と言って
- 100ページびっちり書き込んだノートを見せたとき
- 1ページだけ書いたノートを見せたとき
とで、どちらが間違いを指摘してもらえる可能性が高いかといえば「1ページだけ書いたノート」の方なのは当たり前です。そもそも100ページ全部読んでくれるような暇な人はあまりいません。しかも「100ページびっちり書き込んだノート」は、その大半が「教科書の丸写し」になっていたりします。そういうものはそもそも間違いが入る可能性が少なく、本人の実力を反映していないノートですから、見ても無駄なんですね。
逆に、教科書を読み込んで本人が自分の言葉で短く要約したノートは、本人の実力をストレートに反映します。短いからチェックしやすいし、間違いが入っている可能性が高いので、「教える」力を持った「詳しい人」にとってもチェックのしがいがあります。
というわけで、「よく考えた上で要約して書く」のであれば、間違っていても大丈夫なんです。恐れず堂々と書いてしまいましょう。
事例:「メンタルヘルス対策の推進」について要約してみました
では、実際に「膨大な情報量」を読んで「短く要約した」事例をご覧に入れましょう。
今回私が参照した原本はこちらの資料(職場における心の健康づくり)です。
鬱病などメンタルヘルス問題に苦しむ社会人が増えている情勢を受けて、厚生労働省が作ったパンフレットです。全部で28ページあって、細かい字で書かれているため、まともに読むと何時間も掛かります。資料の2ページにこんな個条書きがあります。
メンタルヘルス対策の推進
- 過重労働による健康障害防止対策を講じる
- 労働者1人1人の気付きを促すための教育、研修などを実施する
- 事業場内外の相談体制の整備、職場復帰対策などを推進する
短いですね。これが要約になっていると言えばなっているわけですが、他人に作ってもらった要約ではダメです。自分の言葉で書かなければ意味がありません。そこで、上記の3箇条をヒントに、メンタルヘルス対策に関して「誰が、いつ、何をすることが必要か」を整理して書いてみたのが下記チャートです。
真ん中の「良好」から「回復」までの横のラインは、個人の健康状態の推移を表します。「良好」のままでいられればいいのですが、過重労働が続くと健康を悪化させることが多く、「不調」になっていきます。不調でも「軽度」なうちに自分で気付いて手を打てればいいのですが、「重度」になってしまうと会社に来れなくなり、それからやっとリハビリをしても回復には時間がかかってしまいます。
そこでメンタルヘルスマネジメントをする必要がありますが、「良好」な時期のうちにやっておきたいのが「教育、研修」。その主な狙いは「不調になったときに、労働者1人1人が自分で早めに気付く」ようにするため。気づいたところで相談できるような相談体制を組んでおくことも必要です。
また「不調(重度)」のところで職場として対応するような何かも必要と思われますが、分からなかったので「?」としてあります。最後に「回復」期には職場復帰のためのケアが望まれます。
一方、上の方の「過重労働に対する防止策」は、メンタルヘルスとは別に基本的な労務管理として必要なことなので、メンタル系の部分とは分けて書いておきました。
全28ページあった原本の文書に比べると極端に情報量が少ないですね。「自分の言葉で要約する」というのはこんなイメージです。このぐらいの量なら、ハッキリ間違っているところがあれば詳しい人なら一目で見つけて指摘してくれます。ぜひ、「膨大な情報量を全部覚えよう」と頑張る前に、「よく考えて短く要約し、間違っていても恐れず書く」こと、そしてそれを詳しい人に見せて意見を聞くことを試してみてください。
当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp )。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。
当記事についてのご意見ご感想ご質問等は「twitter:@kmic67」宛でも受け付けております。中には記事では書ききれない情報もあります。物足りなく思った時はぜひ「twitter:@kmic67」宛に質問を飛ばしてみてください。
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