仕事に「断捨離」は利かない――美崎栄一郎さんに聞く、机でセルフブランディングのすすめ:机がぐちゃぐちゃで困ってる人へ(2/2 ページ)
会社員時代の経験から、机の上を“基地化”するコツなどを発掘した美崎栄一郎さん。近著『仕事はできるのに、机がぐちゃぐちゃで困ってるきみへ』の内容を実践してもらいたい人に向けてメッセージをもらった。
机でセルフブランディング
――なるほど。机を使った人間関係の交通整理や自分自身の演出ですか。そんなところで机が役に立つとは思いませんでした。
美崎 僕がそれに気付いたのは入社1年目。課の決まりで、新入社員が始業前にフロア全体を掃除することになっていたんです。その時に色んな人の机を見る機会があり、机でセルフブランディングできるな、と。その後も異動が多かったので、意識的に机を使って自分を演出しました。
――掃除からそのような気付きがあるとは、何が役に立つか分からないものですね。ところで本の中では、自分の机の上のことだけではなく「主人公」の所属している商品開発3課の人たちの机の上の描写もありますよね。他の人を変えられないのに、なぜそのことまで触れられているのでしょうか?
美崎 そもそもこの本は、片付けることだけではなく、チームとして仕事を効率良く行っていくためのノウハウも含まれているんです。例えば、この中に出てくる「ナダレ」というあだ名の人の机は、書類がうず高く積まれていて、今にもナダレが起きそうになっています。このような人の机の上に、今日中に処理してほしい伝票を置いたところで期待できるでしょうか?
――書類に埋もれてしまい期待できないですよね。
美崎 PCのモニターに付せんがベタベタ貼ってあって、しかも全然そのタスクをこなしていないらしく、劣化してしまったような付せんがある状態のところに、伝言メモを貼り付けたところで、それを見てもらえるでしょうか?
――それも無理ですよね。
美崎 そうなんです。自分はきちんと仕事を回したつもりでも、相手に伝わっていなければ、仕事は進まずにストレスになってしまうだけなんです。それで、相手の机の上を見て、その人にはどのようにパス……つまり、仕事を回せばいいかを考えるためにもそのような描写が必要だったのです。他人は変えられないですから、相手によってコミュニケーションの方法を自分が変えることで、スムーズに仕事が進み片付いていくわけなんです。
デスクトップのアイコンは右側に置け
――「効率良く仕事を進める」点に関して言えば、ちょっとしたティップスもあちこちにちりばめられていましたね。例えば、PCのデスクトップに表示されるアイコンの数とか、位置とか。
美崎 そうですね。何でもかんでもアイコンをデスクトップ上に置いておく人がいますが、僕なんかは目の前にごちゃごちゃとアイコンが並んでいると、それだけでストレスになってしまいます。できるだけアイコンは2列に収まる数、しかも、「右側」に配置することを薦めています。
――Windowsでは通常、デフォルトでアイコンは左側に配置されていきますよね? いちいち位置を変えるのは、かえって効率悪くはないですか?
美崎 MacでもWindowsでも、メニューは左側に出てきますよね。そうすると、メニューを開くたびに、デスクトップのアイコンが隠れてしまうのです。それを回避するために、いちいち移動させるほうが効率が悪いと考えたのです。
――そういう、ほんのちょっとしたことが、仕事の効率を上げるわけですね。
美崎 ほかにも、電話の(受話器と本体の間の)コードが異様にくるくるとねじれてしまっているのを見かけることがあります。あれは何でだと思いますか? 電話を右手で受けて、メモしなければいけなくなって左手に持ち替えて、その手で受話器を置くので時と共にだんだんねじれが大きくなってしまい、ああなっているんです。最初から左手で受話器を取れば、メモを取る必要が起きたときに持ち替える必要もないですし、すぐに右手でペンを取れますから、自分にも相手にも時間短縮になり、効率アップします。それにあんなにコードがねじれることもないですしね。
少しずつでも大きな効果
――最後にこの本を読んで欲しい人へのメッセージをお願いします。
美崎 机がぐちゃぐちゃになってしまうのは、仕事をしようと頑張っているからで、戦っている証拠なんですよ。だから、それで構わない人はそのままでもいいと思います。でもこの本を読んで、小さな工夫で大きな変化、仕事の効率がもっと上がることに気付いてもらい、それらのヒントを活用してもらえたら、と思っています。できることからでいいんです。「変えなくちゃ」と肩肘張らずに、まずはモニターの位置をちょっとずらすとか、電話の位置を変えるとか、そうやって少しずつ効率良くなったという効果を実感して欲しいと思います。
――ありがとうございました。
「『机の上がぐちゃぐちゃでもそれでいいじゃないか』と言う人は、それでもいいと思います。ただ、『これではだめだ、何とかしなくちゃ』と困っている人に読んで欲しいですね」という美崎さんの言葉が印象的だった。
何も難しいメソッドなどではなく、本当にごく簡単な小さなことをするだけで、仕事の質や成果が格段にアップすることをこのインタビューを通して納得できた。では具体的にどんな「小さな工夫」をすれば良いのか? この本はそのヒントがぎっしり詰まったものである、と言えよう。
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