連載
» 2005年04月01日 10時22分 公開

たかがフォント、されどフォント神尾寿の時事日想

機能であり、デザインであり、そして最も基本的なUIであるフォント。Major Kongフォントをめぐる今回の騒動で、携帯のデザインにとってフォントが非常に重要であることを再認識させられた。

[神尾寿,ITmedia]

 昨日、ある媒体の取材で日産自動車にお邪魔した。純正カーナビゲーションとテレマティクスについてのインタビューだったのだが、その中で、印象に残った言葉がある。

 「(日産のカーナビは)UIデザインにこだわっています。中でも、『フォント』と『色』には気を遣っているんです」(宮原修身・日産自動車商品企画本部車種横断戦略室主担)

 クルマの中、特に運転中では画面を注視できる時間が限られている。判読のしやすさは極めて重要であり、さらにその上のステージとして、インテリアとマッチしたデザイン性も必要だという。日産のカーナビは、GUIデザインをクルマのインテリアデザイナーが手がけており、その成果がフォントという細部にまで現れている。

 もうひとつ、筆者の記憶に強く残っているのが、BMWにおけるフォントの扱いだ。こちらはスピードメーターやタコメーターで使われる数字のフォントだが、これが車種によって違うのだ。具体的には、セダン/ツーリング系はゴシック体を用いており、クーペはイタリック体になっている。以前、BMWの商品企画担当者に尋ねてみたことがあるのだが、その理由は、「クルマの成り立ちの違いによるもの。クーペは(セダン系よりも)よりパーソナルであり、プライベートな満足感が重視される。エレガントさが求められる」というものだった。思い返してみれば、昔、乗ったMGローバー75のインパネでは、BMWよりさらに典雅なイタリック体が使われていた記憶がある。

 このようにフォントは「機能」であると同時に、「デザインの一部」である。さらに突き詰めれば、もっとも基本的なUIであると言えるだろう。

 携帯電話の世界では、小さい画面で読みやすい文字としてシャープの「LCフォント」が採用されたり(2003年11月13日の記事参照)、一部の機種で丸文字などのフォントが選べる機種がある。しかし、フォントをデザインの領域まで踏み込んで、エクステリア・インテリアの両面で本格的に使ったのはau design projectからだろう。

 特にPENCKのエクステリアで使われた「Major Kong」フォントは、パーソナルかつプライベートなケータイという位置付けに合っており、それは「クーペのイタリック」のようにマッチしていた。

 既報の通り、Major Kongを巡っては騒動が起きている。このトラブル自体は当事者間の話し合いが始まっており、解決に向かうだろう。KDDIとサイトウマコト氏は不注意だったと思うが、事故は事故である。

 だが、せっかくなので、KDDIとサイトウマコト氏は公式に謝罪をした上で、Major Kong採用の経緯と、携帯電話デザインにおけるフォントの重要性について積極的に語ったらどうだろうか。世界的に見て、携帯電話のデザインは重要になってきており、その底上げを促すようにフォントの重要性にも世間の目を向ける。

 au design projectという文化活動の意義は、携帯電話デザイン全体の底上げをし、最終的にユーザーの満足度をあげるところにあるはずだ。今回の騒動を携帯電話業界全体のプラスにするほどの度量の大きさを、KDDIに期待したい。

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