セミナーの後半には、ビジネス活用セッションと題して、大塚商会、ソフトブレーン・インテグレーション、ピーエスシーの3社が登場した。モバイルビジネスの現状や自社の取り組み、自社製品の紹介などをそれぞれ行った。
3社の中でも、特にユニークなテーマで講演を行ったのが、大塚商会の丸山義夫氏だ。「せっかくのPDAが、机の引き出しの奥にしまいこまれてしまうのはなぜか」という切り口には、筆者ならずとも苦笑いするしかない。これまでPDAの企業導入も数々手がけてきた同氏は、「今年大塚商会に入ってきた新入社員は、誰一人CLIEもPalmも知らなかった。『パーム』と聞いて、お菓子の名前かと言われた」と嘆いてみせた。PCと携帯の間を埋めるものとして期待されていたPDAは、結局日本市場では根付かなかった。しかしW-ZERO3などのWindows Mobile端末は、PDAが取れなかった新しい市場を取れるかもしれない、と期待を寄せる。
ASPサービスにPHSの通信回線を含めて提供するのがソフトブレーン・インテグレーションだ。同社はウィルコムとPHS販売業務において提携を結び、「eセールスマネージャーASPビジネス・ライン」サービスの提供を開始したばかり。このサービスは、同社の営業支援サービス「eセールスマネージャー」をエンタープライズ向けASPサービスとして、ウィルコムの定額通信料金サービスとセットで提供するというもの。1ID/1回線につき月額1万5000円という基本料金の中に「eセールスマネージャー」エンタープライズASP利用料、ウィルコムの音声定額、データ通信が含まれている。
営業社員の通話実績を管理することによって、業務効率の向上はもちろん、通信費の低減も実現する、と同社社長の柴崎忠生氏は話す。「回線をNTTドコモからウィルコムに変えたことで、かなりのコスト削減が実現できた」。W-ZERO3については、端末の使い勝手の良さを称える一方で、「バッテリーの持ちをもっと長くしてほしい」と付け加えた。
ピーエスシーの金澤祐一氏は、ビジネスユースに対するセキュリティ強化の観点から、端末内にデータをためない自社製品の「P−BERRY」を採り上げた。P-BERRYは、サーバを自社で構築ほどの規模にない企業に、Exchange Server機能をASPサービスとして提供するもの。金澤氏はW-ZERO3で「P−BERRY」を使うメリットのひとつとして、会社のPCにケーブル接続することなくサーバとダイレクトに同期が行える点を挙げた。
セミナーの最後には、マイクロソフトとインテルが講演を行い、パッケージ化された汎用OSであるWindows Mobileの優位性、将来性を改めて強調した。「ニューノーマル、“新しい当たり前”を作っていきたい」(インテルの高橋偉一郎氏)
4時間半にわたるセミナーを総括すると、最新の技術を紹介するというよりは、“W-ZERO3をめぐる法人市場の可能性を考える材料を広げてみせた”という印象を受ける内容だった。低価格で提供されるASPサービス、高性能で信頼性の高いハードウェア、広いエリアと高速な伝送速度を達成した通信回線、汎用性があり拡張性に富んだOS。こうした条件がようやく揃った”今”だからこそ、ビジネスシーンでW-ZERO3を活用する現実味が出てきたということだろう。
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