「iPhone」訴訟、Appleに勝ち目はあるか(2/2 ページ)

» 2007年01月12日 17時34分 公開
[Paula Musich, Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK
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Appleの主張は諸刃の剣

 「iPhoneはVoIPにおいて一般用語であり、Ciscoの商標はほとんど意味をなさない」というのがAppleの言い分だと、法律事務所Eckert Seamans Cherin & Mellottの知的財産権部門責任者、デビッド・ラダック氏は解説する。

 「Appleはこの点で非常に微妙な一線にいる。iPhoneが通信分野で一般用語だという主張がもし通ったとして、例えばMotorolaが“iPhone”を出してきたらどうなるのか。この場合、Appleが業界の他社に対してiPhoneという名称の権利を主張することはできない。これは諸刃の剣だ」とラダック氏は言い添えた。

 CiscoとAppleの争いが法廷に持ち込まれた場合、「混同を招く可能性」が争点になるとラダック氏は見る。「AppleによるiPhoneの利用は、Ciscoが現在使っている商標のiPhoneと混同される可能性があるのか。例えば大手法律事務所の社員で、携帯電話を持っている人物が、職場ではVoIPサービスを使う場合もあり得る」(同氏)

 混同という点では、逆の可能性もあり得る。

 「(Appleのような)大手がこの用語で脚光を浴びれば、Ciscoがこの言葉を使っていることに対して『Appleのぼったくりだ』と言われる可能性もある。これがもう1つの争点になる」とラダック氏。

 混同の可能性を争点にした場合、決着させなければならないのはCisco製品はApple製品と関係があるのかという問題だ。携帯電話と職場の電話、家庭の電話はいずれ融合するとCiscoは予想しており、この関連性を主張する公算が強い。

 「『これはすべて関連するものであり、当社が携帯電話に進出するのは自然な流れだ』というのがCiscoの主張になる」(ラダック氏)

 Appleが米国外で商標登録を進めていることについてラダック氏は「Appleが(Ciscoを)米国で孤立させようとしているのは興味深い。しかし米国は世界最大の市場であり、国ごとに違う商標で展開するのは難しいだろう」と語った。

 CiscoのiPhoneはコードレス電話となっている。

 「現在のiPhoneは未来のデバイスとなるようなものではなく、当社は意を強くしている。家庭、携帯、職場の電話の融合の可能性は無限だ。この観点から、ブランドの保護は非常に重要となる。当社にとって問題の焦点となるのはこの点だ。当社はこの商標をAppleと共有することに極めて前向きな姿勢だ」

Ciscoは和解に前向き

 Ciscoは1月10日正午、米カリフォルニア州北部地区連邦地裁にAppleを相手取った訴訟を起こしたが、商標問題をめぐるAppleとの合意成立の希望は現在も捨てていない。

 「当社は訴状を提出し、手続きを進行させる。業界と当社顧客にとって最善の措置を取りたい意向だ。合意に対して前向きな姿勢は変わらない」(ノー氏)

 「法廷外で決着させる必要があるのは明らかだ。法廷に持ち込まれればCiscoの勝訴は目に見えている。Appleに勝ち目はない」。こう話すのは、Burton Groupのリサーチディレクター、デビッド・パスモア氏。「率直に言って、Appleがどうしてこれを単純にiPodと呼ばないのか分からない。これはあらゆるクールな機能を備えたiPodだ」

 Ciscoの上級副社長兼法務顧問、マーク・チャンドラー氏は声明文で次のように述べている。「Appleが繰り返し、CiscoのiPhoneの名称を使わせて欲しいと許可を求めてきたことから、Ciscoは誠意を持って交渉を開始した。Appleの新しい電話は非常にエキサイティングかもしれないが、当社の商標を許可なく使うことは許されない」

 しかし結局のところ、長期的にはすべて問題でなくなってしまうかもしれない。

 「私は法律家ではないのでこの問題の法的側面についてはコメントできないが、はっきりしていることが2つある」。JupiterResearchのマイケル・ガーテンバーグ氏はeWEEKにこう語った。「第1に、Appleは製品発表前に法的問題をすべてクリアしておくべきだった。第2に、Appleがこれを何と呼ぼうと私はたいした問題だとは思わない」

 「もしiPod PhoneとかPodPhoneとか何とか名前を変えたとしても、それが原因で売り上げが1台でも減ることはないだろうし、いずれにしても、みんなからiPhoneの名で呼ばれるだろう。それが現実だ」

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