リビング+:ニュース 2003/08/04 23:59:00 更新


ブロードバンドの主戦場はリビングルームへ?

ぷらら、BIGLOBE、@niftyが放送型&オンデマンド型の動画配信実験を開始する。ISP3社が動画配信に本腰を入れる点もさることながら、ジュピター・プランニング、東北新社、セコムといったメディアグループが参画している点にも注目が集まりそうだ。

 ぷららネットワークス、NEC(BIGLOBE)、ニフティ(@nifty)の3社は、「フレッツADSL」および「Bフレッツ」ユーザーを対象として、放送型&オンデマンド型動画配信サービスの共同モニター実験を8月4日に開始すると発表した(記事参照)。今冬をメドに商用サービスへ移行することを前提として、フィールド実験を行う。大手ISPの3社が本格的な動画配信サービスを手掛けることにくわえ、東北新社やジュピター・プランニングといった有力な番組供給会社が参画している点も注目を集めそうだ。

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STB「OKI Media Player」。仕様はオープンのため、本格サービス開始時には複数のベンダーからSTBが供給される可能性があるという

 実験は、ぷららネットワークスが構築する配信プラットフォーム「4th MEDIA プラットフォーム」(後述)を使い、専用のセットトップボックス(STB)に対して映像を配信するというもの。ユーザーはTV画面で多チャンネル放送とVoD(ビデオ・オン・デマンド)を楽しめる。実験開始当初のラインアップは、18のチャンネルと約40本の映画やアニメ。映画はハリウッド作品が中心となっている。

 モニター実験は、東京と大阪で2回に分けて行われる。第1期は8月4日〜10月31日まで、第2期は9月1日から10月31日までの予定で、募集人数は東京地区が1000人、大阪地区が300人の合計1300人。応募受け付けは各ISPサイトで行う(ぷららBIGLOBEニフティ)。条件は、対象エリアに住む「フレッツ・ADSL」および「Bフレッツ」ユーザーのうち、3社のISPに加入していること。そしてADSLの場合は、実効速度が2Mbps以上出ている必要がある。

 モニターには、専用STB「OKI Media Player」が貸与され、期間中に配信される動画コンテンツをすべて無料で視聴できる。動画フォーマットは、主にADSLユーザーを対象としたMPEG4 ASP Level5(可変ビットレート、平均1.5Mbps、最大2Mbps)と、帯域幅に余裕のあるユーザー向けの4Mbps MPEG2の2種類を用意。将来的にはH.264の採用も検討していくという。ビットレートはユーザーがSTBの設定画面で選択可能だ。

 STBは、PPPoEクライアント機能を持ち、地域IP網内にあるサーバとの間でセッションを張る。現在のフレッツシリーズは標準で2セッションに対応しているため、インターネットと映像配信サービスを同時に利用できるが、設置時には少し注意が必要だ。ルータやPCと共存させる場合はモニターキットに含まれるハブの下に接続するか、ルータをブリッジモードにしてPPPoE接続を端末側で行う必要がある。

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リモコン操作は、TVやビデオのそれと同じ。多チャンネル放送の場合は上下キーやチャンネル番号指定によって切り替える(チャンネル番号は、スカイパーフェクTV!と同じ)。またVoDでは、4倍速の早送り・巻き戻しにくわえ、1/2、1/4、1/8、1/16のスロー再生、一時停止、コマ送りなどのトリックプレーに対応。時間指定による場面サーチや音声のミュートなどもサポートしている

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デジタルの不正コピーを防ぐため、映像/音声出力はアナログのみ

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電子番組表(EPG)は一度に3チャンネル、3時間分を表示する

セキュアな配信環境

 実験では、ぷららが構築する「4th MEDIAプラットフォーム」を利用してセキュアな配信環境を実現する。4th MEDIAは、配信システムとネットワークのほか、ユーザー認証や課金代行といった管理機能を含むプラットフォーム。マクロビジョンによるコピー制御や動画配信時の優先制御といった特徴を持つ。

 多チャンネル放送では、東京・有明にあるデータセンターに衛星(J-SAT 3/4号機)受信システムを設置し、一度アナログに戻してMPEG-2/4に再エンコードしながらIPマルチキャストで再配信する。アクセス回線には、ユーザーがリクエストした番組だけが流れる仕組みだ。一方のVoDは、コンテンツホルダーからビデオマスターの供給を受け、ぷららが事前にエンコードする。それをヘッドエンドのストレージに蓄積しておき、ユーザーのリクエストに応じて送出するという。

 ポイントは、いずれの配信形態でもコンテンツはすべて、CAS(Conditional Access System:限定受信システム)を通ってからネットワークに出ること。ここでコンテンツはAESのRijindael方式を用いてリアルタイムに暗号化される。複合化に必要な暗号鍵は公開鍵方式で配送するが、「視聴中であっても数分間に1回」という短期間で暗号鍵が変更される仕組みだ。「万が一、暗号キーが解読できても、そのときにはもう鍵が変わっている」(ぷらら)。

 また、VoDの場合はCASを介すことで「コンテンツのコンテナであるMP4ファイルとコンテンツの実体を分離して格納するため、外部から直接ファイルにアクセスすることはできない」のがメリットとなる。

チャンネルオペレータ、コンテンツアグリゲータが本気に?

 放送型の映像配信サービスは、BBケーブルTV!KDDIの動画配信サービススカイパーフェクTV!のFTTH放送など、既に多くの事業者が計画を明らかにしている。ただ、今回の発表が他社とひと味違うのは、ISPや通信事業者よりも、CATVやBS/CSなどに番組を供給しているチャンネルオペレータが中心になっていることだ。

 ジュピター・プログラミング、セコム、東北新社の3社は、共同出資で「オンラインティーヴィ」を9月に設立し、電気通信役務利用放送法に基づく「有線役務利用放送事業者」の登録を申請する。オンラインティーヴィは、ブロードバンド向け多チャンネル放送のアグリゲーションを専門に手掛け、回線と配信を担当するぷららネットワークスと番組供給会社との橋渡し役を担う(ぷららが有線役務提供事業者)。

 東北新社は、映画専門の「スターチャンネル」をはじめ、BS/CS合わせて10チャンネルを供給する有力チャンネルオペレータだ。また、ジュピター・プランニングも「ディスカバリーチャンネル」「日本映画専門チャンネル」など多数のチャンネルをCATVやCS放送向けに提供中。セキュリティ事業が有名なセコムも、関連会社のジャパンイメージコミュニケーションズ(JIC)を通じてCATV/CSにチャンネルを提供している。今回の実験サービスで配信される「旅チャンネル」「MONDO21」などもJICの扱いだ。

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ビジネススキーム。オンラインティーヴィがコンテンツ・アグリゲーターとなり、コンテンツを集める。一方、各ISPは、「Plala.TV on 4thMEDIA」「BIGLOBE.TV on 4thMEDIA」「@niftyTV on 4thMEDIA」といったブランドで自社サービスのラインアップにくわえ、料金徴収を含むユーザーとの窓口になる

 つまり、オンラインティーヴィの設立は、チャンネルオペレータがブロードバンドという新しい流通手段に着目し、自ら開拓に乗り出す意志の表れといえる。これまで、IP上の映像配信はコンテンツホルダーに敬遠されがちだったが、国内の大手メディアグループが番組供給体制を整えることで、映像コンテンツの幅と市場の拡大も期待できるはずだ。

パーソナルからファミリーへ

 一方、ブロードバンド加入者が1000万を超え、明らかに鈍ってきた新規加入ペースをカバーするため、各ISPにはサービスの再検討が求められている。成長を維持するには、新しいユーザー層の開拓か、付加サービスによるユーザーあたりの利益アップしかない。発表会に同席したNEC、BIGLOBE事業本部長の谷岸一善氏は「われわれはナローバンドの時代から付加サービスに力を入れており、現在は全売り上げの4割以上が付加サービスによるものだ。VoDやIP放送により、付加サービスが一層加速すると期待している」とした。

 TV画面で視聴できるVoDや多チャンネル放送は、IP電話に続く有望なアプリケーションだ。そして、「今後利用したいサービス」の第1位が「映画・ドラマ」と、映像コンテンツに対するユーザーの期待は非常に大きい(情報通信総合研究所の調査による)。

 ニフティの古河建純社長は、ブロードバンドの基幹サービスが既にインフラから付加サービスに移ったと指摘する。「そして付加サービスは、Webやメールなどのパーソナルなサービスから、(放送やVoDなど)ファミリーで楽しめるものへと移行するだろう」。

 国内のほぼ全世帯に普及しているTVは、IP電話に続く非PC端末の有力候補だ。ブロードバンドの主戦場は、PCがある書斎から、TVや電話が置かれたリビングルームへ移ろうとしている。

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左から、ぷららネットワークスの板東浩二社長、NECの谷岸一善BIGLOBE事業本部長、ニフティの古河建純社長、ジュピター・プログラミングの竹岡哲朗社長

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関連リンク
▼ぷらら「Plala.TV on 4thMEDIA」
▼BIGLOBE「BIGLOBE.TV on 4thMEDIA」
▼ニフティ「@niftyTV on 4thMEDIA」
▼東北新社
▼ジュピター・プランニング
▼セコム

[ITmedia]



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