日経が世界の経済メディアのなかで「大きな存在感」を示すのが難しい理由スピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2015年07月28日 13時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

「外」から冷静に見ると「異常」

 発行部数もそうだ。WSJにダブルスコアだというが、やはり内訳をみれば約273万部(2015年6月末のABC調査)は「日本経済新聞」だ。70万部のFTを傘下に入れた途端に自分たちまで「グローバルメディア」に引き上げているのはあまりにもご都合主義だ。

 これまではこういうおかしな記事を書いてもスルーされたが、これからはそうはいかない。日本のローカルメディアだった日経がFT買収で一躍スポットがあたり、欧米のジャーナリストたちから注目が集まっているからだ。彼らは納得のいかないことは徹底的に追及する。ネチネチと問いただす。実際にすでに買収発表の会見で外国人記者から痛いところを突かれている。

 「オリンパス事件をFTが追及していたが、日経は出遅れたのではないか」

 覚えている方も多いと思うが、2011年に発覚したオリンパスの粉飾決算事件は大手メディアがみな沈黙するなかで、会員制情報誌『FACTA』のスクープで明らかになった。これを受けてFTも鋭く追及したが、日経はすぐには追っかけなかった。日経の岡田直敏社長は、「出遅れたとか遠慮したとかではない」とムキになって否定したが、海外メディアからは明確に「株主」の利益を守ることをうたうFTと「企業のPR紙」なんて揶揄(やゆ)される日経が一緒になってもうまくいかないんじゃないのと否定的な声もあがっている。

 このことからも分かるように、日本の新聞はやたらと自分たちのことを「世界一」とか「レベルが高い」とか持ち上げるが、「外」から冷静に見てみると、「異常」に映ることのほうが多い。その代表が、発行部数だ。

英国で発行されている『フィナンシャル・タイムズ』

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