地方の観光地を衰退させたのは誰か水曜インタビュー劇場(観光公演)(6/6 ページ)

» 2015年07月29日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6       

外国人観光客が増えなかった理由

アトキンソン: マイナス面ばかりを語ってきましたが、「面倒」を避けることでプラスの面も生まれているんですよね。例えば、終身雇用。転職をするのは「面倒」なこと。履歴書を書いて面接を受けなければいけません。もちろんそれだけでなく、会社に就職すれば、そこで新たに人間関係を構築しなければいけません。学校を卒業して、給料が右肩上がりに増えていって、定年まで働くことができれば「面倒」は避けられますよね。

 「終身雇用という制度があるのは、日本人が勤勉だからだ」という人がいますが、本当にそうでしょうか。終身雇用があるのは、「面倒」を避ける気質だと思っているんですよ。従業員だけでなく、会社側からしても、新しい人材を探さなければいけないので、それは「面倒」なこと。

土肥: 経営者と従業員の「面倒くさい」が合致したということですか?

アトキンソン: はい。なぜ日本でこれまで外国人観光客が増えなかったのか。その答えのひとつは「面倒だった」からでしょう。たくさんの外国人が日本にやって来れば、いろいろと変えなければいけません。外国人向けの施設をつくるのが「面倒」という意味だけでなく、価値観を変えることが「面倒」なんですよ。

 繰り返しになりますが、戦後、日本経済が右肩上がりで成長したのは「面倒くさい」文化という強みがあったから。しかし、少子高齢化で「人口」という強みが失われつつある中で、この「面倒くさい」文化の転換が求められているのではないでしょうか。

(終わり)

連載が本になりました!:

 連載「仕事をしたら○○が見えてきた」が、『ササる戦略』(三才ブックス)というタイトルで書籍化されました。

 「なぜミニストップのソフトクリームは真似されないのか?」「50年以上前に発売された『スーパーカブ』が、いまも売れている理由」など、業界が注目する12社から“ヒットの法則”を紹介しています。

 ビジネス書が苦手……という人でも大丈夫。商品を開発した人はどのような苦労があったのか。その商品を売る人はどのような工夫をしたのか。マーケティングや消費者の行動などを分かりやすく解説していますので、オススメの1冊です!

 →『ササる戦略


前のページへ 1|2|3|4|5|6       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.