「今沖縄の小売業はインバウンド需要の高まりで好調だが、いつまでも続くとは思わない方がいい。先を見据えた取り組みが重要だ」――。こう気を引き締めるのは、百貨店「リウボウ」やスーパーマーケット「りうぼう」などを運営するリウボウホールディングスの糸数剛一社長だ。
同社も外国人観光客による免税取扱高は右肩上がりで、百貨店では早くから無料Wi-Fiを整備するなど、外国人客の来店促進に力を入れている。また、スーパーマーケットの「天久りうぼうフードマーケット」を2015年1月にリニューアルオープンし、地元・沖縄や日本の良質な食材、商品を取り揃えるなど、高級感ある店作りにした。これも1つにはインバウンド対策を見据えたものだという。
ただし一方で、「インバウンドといっても現状は沖縄全体の観光客の1割程度に過ぎない」と糸数社長は述べる。例えば、インバウンドの割合が4〜5割を占めるフランスなどヨーロッパ諸国との差は歴然だという。さらには外国人観光客が東アジア地域に偏っていることも軽視できないという。政治的な問題などが起きれば一気に観光客が減少するリスクをはらんでいるからだ。
「今後はもっと多国化しなければならない。例えば、まだまだ少ないロシアやヨーロッパの観光客を取り込むことができるのではないか。これは企業が個々に取り組むというよりも、沖縄全体で考えるべきテーマといえる」と糸数社長は力を込める。
スーパーマーケット業界全体が低迷する中で、インバウンドは事業成長の1つのきっかけになることは間違いない。しかし、目の前の状況に浮かれて、その場だけの対応ではやがて再び苦境が訪れるのは明白である。好況な今だからこそ中長期的な視野を持ったインバウンド戦略が求められるのではないだろうか。
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