ジュンク堂「非公式アカウント騒動」が「言論問題」にすり替えられてしまった理由スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2015年10月27日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「従業員による社内規約違反」で終わらせたくない人々

 国会前なんかでワーワーやっていらっしゃった方たちからは、「これのどこが悪い! ヒトラー安倍の暴走を止めているだけじゃないか」なんて怒りのシュプレヒコールが聞こえてきそうだが、一般社会の通念では、社員やバイトが会社の名前を冠したTwitterアカウントで、「政治闘争」を呼びかけることはかなり抵抗がある。

 従業員がSNSで炎上したり、個人情報を流したりという不祥事が後を絶たないということに加え、なによりも特定の政治思想が会社全体に及んでいると思われると、商売にもさまざまな悪影響が出るからだ。そのため、まともな企業では「無断で社名を使ってSNSはやらない」「政治活動をするのは個人の勝手だけど就業時間外にやって」みたいなルールを社員に課す。というか、丸善ジュンク堂にもあったらしい。「ジュンク堂渋谷非公式」は批判が殺到された後、アカウントが削除されているのだが、同社によると、これは2009年に定めたSNS運用の社内規定に反したからだという。

 そう聞くと、今回の「騒動」は「従業員による社内規約違反」であり、それ以上でもそれ以下でもないのだが、どういうわけかそういう話で終わせたくない人たちがいる。

 「言論弾圧だ」「言論の自由を守れ」などと一部ネットユーザーが騒ぎ出しているのだ。さらに、「ジュンク堂渋谷非公式」削除後、ほどなく「ジュンク堂渋谷非公式(有志の会)」なる別アカウント(現在は削除)が立ち上がると、以下のような逆ギ……いや、反論を始めたのだ。

 東京大学教授が「自身が東大教授であること」を明らかにして、東大の公式見解と異なる見解をテレビで述べることが許されないとすれば、それは表現の自由の侵害です。ジュンク堂書店と店員の関係も、これと全く同じです。

 「非公式アカウントを作り、個人的な見解を表現する自由」というのは、まことにちぽっけな自由ですが、そんなちっぽけな自由も擁護できないで「自由と民主主義」を守るも、何もあったものではないでしょう。

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