ジュンク堂「非公式アカウント騒動」が「言論問題」にすり替えられてしまった理由スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2015年10月27日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ジュンク堂」が引っかかった

  会社に属して給料もらっているんだから、周りが気持ち良く働き、お客さんに嫌な思いをさせないよう最低限のルールを守りましょうやというドメスティックな話が、いつの間にやら「言論の自由」という国家天下の大問題へと「拡大解釈」されてしまったわけだ。

 一般人の感覚では「主張のすり替え」のような印象を受けてしまうが、こういう飛躍した発想をする方たちが現れるのもしょうがない部分がある。

 実は今、書店員たちの間で「言論の自由」をめぐる戦いが水面下で静かに繰り広げられているからだ。2014年9月29日、神保町の書泉グランデが公式アカウントで、「在特会」元会長・桜井誠氏の『大嫌韓時代』(青林堂)を以下のように紹介した。

 隣国が嫌いな方、なぜ嫌われているのか気になる方や、植民地支配、戦勝国気取り、領土問題、反日、それらについて疑問をお持ちの方にオススメ。

 これが「差別的」だとして批判が殺到して、「特定の主張を支持するかのような表現があったことは様々な思想を扱う知識の場である一書店として、決してあってはならないことと考え深く反省している」と謝罪をしたのだ。

 当然、「ネトウヨ」のみなさんはお怒りになる。当たり前のことが書いてあるだけなのに、なんでここまで謝罪をするのだ――。で、腹の虫がおさまらない一部の方は、少しでも「偏向」の兆しがみえるフェアや選書があれば批判をしようということで、目を光らせていた。そこへひっかかったのが「ジュンク堂」である。

 5月下旬にジュンク堂書店難波店で、中国へのバッシングやヘイトスピーチを批判する「反ヘイト本」のコーナーを設けたところ、「反日書店」などとネット上で批判を浴びたのだ。ただ、そんなものをどこ吹く風という感じで、難波店はフェアを続けた。『朝日新聞』(10月24日)の店長談では、「ツイッターをしておらず、そうしたネットの掲示板を見る習慣もないので意に介さず続けた」という。

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