この流れは2007年、世界がん研究基金と米国がん研究協会が、赤肉と加工肉の摂取が大腸がんの「確実なリスク」と評価した報告書を出したことでさらに加速。日本でも日本医師会雑誌などに、肉類の調理加熱中などに生じる物質が、大腸がんに関連するのではないかというような研究が発表される。
こうして徐々に外堀が埋められていくなかで、トドメとなったのが2013年3月7日、スイス・チューリッヒ大学の研究チームが英医学雑誌『BMC Medicine』で公表した研究結果である。
フランス、イタリア、スペイン、英国、ドイツなど欧州10カ国の住民44万8568人(男性40〜70歳、女性35〜70歳)を、約平均13年にわたり追跡調査したこの研究では、加工肉の摂取量が1日50グラム増加するごとに死亡リスクが18%上がったなんて結果が出た。この数字を見れば、今回の国際がん研究機関の報告の「元ネタ」であることは明らかだ。
このような流れを見ても分かるように、「加工肉でがんになる」というのは昨日今日でたような話ではない。一部研究者たちにとっては、長きにわたって取り組んできた研究テーマであり、がんとの因果関係を明らかにすることは「悲願」ともいうべきものなのだ。
なんてことを聞くと、「じゃあやっぱりソーセージとかベーコンは危ないんだ」と思うかもしれないが、一概にそうとも言えない。
研究者たちが科学的に証明しようと長年取り組んできたからといって、信用できるとも限らない。むしろ、「証明したい」というバイアスが加わっているからこそ、胡散(うさん)臭くなってしまう部分もあるのだ。
1995年、日本人が目を疑うような研究結果が科学誌『ネイチャー』に掲載された。なんとサンマの開きから抽出した物質をラットに与えたら、胃がんの発生が確認したという。泣く子も黙る『ネイチャー』にそんなものが出るということで、日本国内のメディアも取り上げ、小売店にも問い合わせがあった。
ただ、これは結論から言うと、とんでもないデタラメだった。この実験を行ったのは米国保健基金のジョン・ワイスバーガー博士らだが、彼らは日本食店で購入したサンマの開きを食塩と亜硝酸塩で処理を行ったものをラットに与えていたのだ。
水産庁はこれに猛抗議。日本では塩漬けサンマには亜硝酸塩を添加することは、食品衛生法で禁止されている。「禁止添加物を実験につかう理由がわからない」と首を傾げて、「安全性に問題はない」という文書まで配布をしたのである。
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