そんなある日、前の会社を創業したときの第1号アルバイトだった舩木(現在、スーパーソフトウエア東京代表。漫画カメラなどのヒットを飛ばしていた)と、食事をすることとなった。その日は彼の誕生日で、彼の誕生日を祝うのは、毎年の恒例行事のようなものだった。
久々の再会に会話を弾ませるうちに、私はふと、第一子の出産時から漠然と考えを巡らせていたベビーシッター事業について、彼に話し始めていた。
「AirbnbのようなCtoCモデルで、ベビーシッターを誰もが気軽に、安全、安心に予約できる、インフラサービスを作りたいのだけど。
例えば、Facebookを使って登録したら、友達が利用したシッターさんが分かるとか、写真を多用して、ベビーシッターさんのキャラクターを前面に押し出すとか。食べログのように利用者のレビューが充実してるとか。
そして、ベビーシッターの人たちもそこからスターが出てくるように全面に押し出す。とにかく、安心して使ってもらうように、面接やテストを通過した人だけにする。でも、時給や働く時間は自分でいつでも好きなように決める感じで……」
頭の中にある構想を次々と話して、「できるかな?」と問い掛ける私に、「できますよ!」と舩木が即答。「じゃあ一緒にやらない?」「やりましょう」と。
そのとき、私は思った。
そうだ、私は起業家だから、社会の問題を解決することが人生の目標であり、それがやるべきことなのだ、と。
26歳で起業したときからの私の夢は、社会のインフラを創ることだった。世の中の全ての人がそれを使い、「これがなければならない」と思われるような社会を進化させるインフラとなるサービスを、最高のチームで作り上げること。
私自身の育児経験と、経営者としての経験、そして、IT業界で長く活躍している舩木のノウハウがあれば、前よりも壮大な社会テーマに挑戦できるはずだ。
テクノロジーの力で、社会問題を解決したい。くしくも、日本では育児支援不足が大きな社会問題となっており、女性のさらなる活躍を促進することが政府目標でもある。まさにこのタイミングで、もう一度、起業家としてチャレンジしたい。
もし、多くの人が必要とする新しい育児支援サービスが全国津々浦々まで普及したとき、「日本にもベビーシッター文化」が広まったとき、そのとき、やっと私はさまざまな人たちにも、社会にも恩返しができるのではないか。
体の中から沸き上がる、久々の感覚。苦しい山とは分かっていても、登りたいという気持ち。登らねばという気持ち。こうして次の人生の目標を見つけた私は、2度目の起業を決意することになった。
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