このように韓国よりも日本は明らかに「地の利」で大きく恵まれていたはず。それでもNPBは、小久保監督を何の“おとがめ”もなく続投させるらしい。関係者によれば、2年後のWBCまで小久保監督率いる侍ジャパンの国際強化試合が数カード組まれることになるという。だが、日本と違って各国の野球代表は常設されているわけではなく、国際大会の舞台でもない試合で急造された相手チームと真剣勝負をすることは難しいだろう。つまり、プレミア12での惨敗を背負ったまま小久保ジャパンは何試合かの“花相撲”を経た後にWBCへ臨むことになるのだ。
「一回失敗したぐらいで、監督をコロコロ変えていたんじゃあキリがない」「監督だけでなく投手コーチ、そして選手も悪い」「この悔しさをバネに次のWBCで倍返しすればいいじゃないか」などと指摘して小久保監督を擁護(ようご)する声もあるが、海外に目を向けると“常識”が違う。野球に限らず、国の代表チームは、監督育成の場ではないのだ。
その点、サッカーの代表監督はヘマをすれば、怒号の嵐にさらされて辞任に追い込まれるケースはザラにある。例えば「EURO 2004」で当時オランダ代表監督を務めていたディック・アドフォカート氏(現英プレミアリーグ・サンダーランド監督)もそうだ。同氏はグループリーグDの大一番・チェコ戦でチームの要のアリエン・ロッペンを試合途中からベンチに下げて温存し、そのまま逃げ切ろうとしたが、守備的布陣が裏目に出てまさかの逆転負け。
チームはその後グループリーグDを何とか2位で突破したものの準決勝でポルトガルに敗れるとアドフォカート氏に対するブーイングが爆発し、メディアや国民から「防衛大臣」とののしられた。この批判によってアドフォカート氏は周囲から肩叩きを受け、監督辞任へと追い込まれている。リードした展開から逃げ切りを図ろうとして失敗し、批判の矢面に立たされたことは、今回の小久保監督の事例と酷似していると言えるだろう。
今もこうしている間に2017年のWBC開催まで時間は刻一刻と過ぎているが、まだ間に合う。侍ジャパンの未来のためにも、関係者には早めにメスを入れることを強く求めたい。
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