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2016年、世界中が注目! フィンテック企業「トランスファーワイズ」とは世界を読み解くニュース・サロン(特別編)(5/6 ページ)

» 2016年01月02日 08時28分 公開
[山田敏弘ITmedia]

フィンテックはどう進化していくのか

 2016年、フィンテックはどう進化していくのか。ヒンリクス氏によれば「2016年はアジアに注目しており、香港とシンガポール、そして日本でもオフィスを立ち上げようとしています」。外国送金サービスに起き始めた地殻変動の波はすごい勢いで拡大しつつあり、日本にも到達しようとしているのである。

 ただこうなってくると、困るのは銀行などの金融機関だろう。国際送金など、これまでほぼ独占的にビジネスを行ってきた金融機関の「常識」が崩れており、ヒンリクス氏が指摘するように、今後、資産運営や支払いシステムなどさまざまなサービスをフィンテック企業に奪われる可能性がある。

 消費者としては、透明性が高まり、競争が行なわれて便利になればいい。ただフィンテックがさらに盛り上がったとしても、金融機関の存続自体が危ぶまれるまでにはならないだろう。2014年、すでに述べたようにフィンテックへの投資は124億ドルだったが、米大手金融5社の資産は15.3兆円にもなる。当然金融機関から見ればフィンテック企業が扱う金融サービスの規模はそう大きくないし、預貯金のサービスなどもフィンテックが取って代わることはない。また銀行がフィンテックの企業を買収してしまうケースもある。

 ただ金融機関のサービスをかなり奪うことになるのは間違いないだろう。ヒンリクス氏はこうも指摘した。「スカイプも12年間で、電気通信部門の40%を奪った。フィンテック企業は金融部門に同様の衝撃を与えるだろうと考えている。あと5〜10年もすれば、フィンテック企業は銀行が提供するサービスの40%ほどを提供することになるとみている。銀行のサービスはフィンテック企業が取って代わり、もっとうまく行われるでしょう。消費者にとってこれは素晴らしいことです。私たちは平等さと透明性をベースにしていますが、これら平等さと透明性こそ、残念ながら金融分野に欠けていることで、これから変わっていくことになります」

 フィンテックは消費者にとってはありがたい変革をもたらす可能性がある。2016年にフィンテックがさらに盛り上がれば、金融機関に取って変わるほどにはならなくとも、金融サービスの変革と改善をもたらす呼び水になる可能性は高い。

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