浅田: スタジアム周辺の過去5年間の情報を調べたところ、周囲ではこのような向きで風が吹いている。ということは、スタジアムのこの隙間から入ってきて、ピッチの上ではこのような風が吹いている、といった情報ですね。
ただ、これはあくまでもスタジアムの外で吹いている風をベースに分析したものなので、チームの関係者に「現地に行ったら、風をチェックしてください。スタジアムの形状によって風の舞い方は違うので」とお伝えしました。
土肥: そ、そんなところまで。
浅田: アナリストの方には、当社独自の観測機「ソラヨミマスター」というモノを使ってもらって、スタジアムの状況を観測してもらいました。この観測機を使えば、風速や体感温度などさまざまな気象データを観測することができるんですよ。試合会場で観測してもらって、そのデータをこちらに送っていただき、気象予測に反映していきました。
あと、日の入りの時間もお伝えしました。夕方からナイターに入っていくときに、夕日が選手の目に入るかもしれません。また、そのタイミングで気温が一気に下がるので注意しなければいけないんですよね。「この試合では○時○分に日の入りする」とお伝えしたところ、「助かりました」と「試合の進め方に役立ちました」といった声をいただきました。
土肥: 11月上旬に行われた「7人制ラグビーアジア予選香港大会」でも、練習から試合当日まで気象に関する情報を提供されたそうですね。
浅田: 試合当日、香港の公的機関の予報は「雨」でした。その情報を聞いて、当社の気象チームは「雨か……」と思っていました。でも、私たちは「雨は降らない」と予報を出しました。代表チームには「雨は降らないので、安心して練習してください」と伝えたんですよね。
土肥: 結果は?
浅田: 降りませんでした!
土肥: おお!
浅田: 予報が当たったので、代表チームからは「スゴいですねえ。また当たりましたよ」と言っていただけまして。イングランド大会と同じように「たいしたことないですよ」と答えていました(笑)。
土肥: 内心はドキドキしていた?
浅田: はい。現地の公的機関が「雨」と予報していたので、こちらが「雨は降らない」と伝えるのは勇気がいったんですよ。日本に比べて海外の情報はそれほど蓄積されていないので、精度がどうしても低くなる。というわけで、現地の公的機関の予報と違うことを言い切るのは、ものすごい覚悟が必要なんですよ。
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