建設会社社長のBさん(50代前半)は、社員のモチベーションの維持についてこのようにおっしゃいます。
「その人が根本的に仕事好きかそうじゃないかを、入社したときに見極める。仕事が好きな社員ばかりというのが理想だけれど、そんな人ばかりではない。仕事に熱狂できる人間にはどんどん仕事を与えるし、そうじゃない人間には『○○を達成したら●●』と分かりやすく“にんじん”をぶら下げてモチベーションを上げていく」
仕事が好きな社員ばかりではない――。では、彼らに仕事を好きになってもらうことはしないのでしょうか? この質問に対して、Bさんは「学生のころ、国語、体育、数学、理科、社会のうち、どれが得意だった?」と突拍子もない質問を投げかけてきました。思わず「国語です」と答えると、以下のやりとりが続きました。
Bさん: 「眠くなったり保健室に駆け込みたくなるような教科はあった?」
私: 「夏場の体育と数学です」
Bさん: 「理由はある?」
私: 「夏場はプールの水面にハチが飛んできて、それがとても怖いからイヤだったんです。数学は単純に苦手でした」
Bさん: 「じゃあ、水泳が室内プールなら大丈夫だったよね?」
私: 「もちろん」
Bさん: 「数学はどう? 例えば、使っていた教科書が読みにくいとか、先生がイケメンじゃなかったとか、そういうのは関係している?」
私: 「ないですね」
と、私が苦笑したところで、「それだよ」と社長は首を縦に振りました。
「人間、誰しも得手不得手というのがある。イヤなものを無理やり好きにさせようとするのは子どもでも難しいのに、大の大人にはとてもとても……。とんでもない労力と時間の無駄だよ。部下も上司の手前、仕事を好きになったフリをすることはできるだろうけど、そのうち疲れて出社するのもおっくうになる。
だから、会社の仲間は好きだけど、お金さえあればすぐにでも退社したいと思っている人には“にんじん”を目の前にぶら下げる。例えば、飲み屋に連れて行くとかボーナスをアップするとかね。
すると、そのにんじんのために仕事をがんばるようになるから、いつの間にか仕事が好きな人に劣らないほどに成長しているんだよ」と、にこやかにおっしゃいました。
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