寺田: これまで仕事というのは、会社の上司や先輩が部下を教育してきました。これからは、人を教育するのではなく、機械に理解させようという動きが進むのではないでしょうか。そのためには「データ」が必要。コンピュータはそのデータから人が気づかないことを見つける。そして、コンピュータは「これが最適な方法じゃないですか」と提示して、それを人間が判断して、実行する。コンピュータが先に業務を理解して、最適化する。そして、そのコンピュータができない部分を人間が補う――。このようなことが定着していくのではないでしょうか。
土肥: 人工知能が進化していけば、私たちの仕事がどんどん奪われるのは仕方がないのかもしれません。しかし、だからといって「はい、失業ね。コンピュータには勝てないや」とあきらめるわけにはいきません。これからの時代、生き残っていくのにはどのような心がけというか行動がポイントになってくると思いますか?
寺田: いまから「統計」のことを勉強するのは難しいかもしれません。デジタル機器を使ってモノをつくるスキルを磨くのはいかがでしょうか。ひとつの会社でずっと勤めていると、その会社で必要なスキルは身につくでしょうが、将来的にはそれを生かすことができなくなるかもしれません。そのように考えると、日本流の雇用流動化が必要なのかもしれませんね。
英国のバークレイズ銀行はちょっとユニークな試みをしています。お客さんのデジタル化を促進しましょう、という動きなんです。高齢者でインターネットバンキングを利用している人は少ない。ATMを上手に利用している人も少ないかもしれません。そうした人たちに、銀行員が支援しているんですよ。こうすれば振り込みができますよ、こうすれば送金ができますよ、といった感じで。コスト効率のいいデジタルチャンネルに誘導するために、銀行員も“変化”しているんですよね。
銀行員がアプリケーションエンジニアになるわけでなく、データサイエンティストになるわけでなく、デザイナーになるわけでもありません。お客さんを変えるために、自らが変わろうとしているんですよね。こうした事例は企業も参考になるかと思いますが、個人にも参考になるのではないでしょうか。
土肥: なるほど。次に、より具体的な話を聞かせてください。残る可能性が高い職業に「旅行会社カウンター係」が入っているのに、なくなる可能性が高い職業に「銀行窓口係」が入っている。これを見て、銀行の窓口で仕事をしている人は「どうして私たちの仕事はなくなって、旅行会社の窓口の人たちは残るの!?」とプンプン怒っているかもしれません。また「スーパーの店員はなくなるかもしれないらしいけど、コンビニの店員はどうなのよ」と思っている人もいるかもしれません。
寺田: それはですね……。
(つづく)
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