リンガーハットが、24億円の最終赤字から「復活」できた理由(3/3 ページ)

» 2016年02月16日 08時00分 公開
[三上成文ITmedia]
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中華鍋の使用をやめたわけ

 もう1つは、オペレーションの効率化に成功した点だ。中華鍋を使用するちゃんぽんのような料理は、火加減や調理人のレベルによって味の差が出やすい。これでは店によって味に差が出てしまい、チェーン店にとって大きな問題となる。その調理方法を改善するためにオール電化を導入。また調理器具も刷新することで中華鍋を使わずに誰もが一定の味を、しかも短時間で提供することを可能にした。これによって従来の職人的な教育を撤廃し、スタッフ教育にかかる時間が大幅に削減できたのである。

ピッキング作業を行うロボット(イメージ) ピッキング作業を行うロボット(イメージ)

 2016年1月には、生ぎょうざのピッキングおよび箱詰めロボットを新宿神楽坂店で試験導入した。これは経済産業省のロボット導入実証事業として採択されたもので、成形された生ぎょうざをピッキングし、トレイに定量で配置するという。店舗の外からガラス越しにロボットによる製造を見ることができるため、これは単にオペレーション効率化だけが目的ではなく、衛生的な製造過程のPRが狙いとのことだ。

 また、店舗業態や出店戦略に関しても同社は消費者ニーズに合わせてスピーディーに変化させている。

 昨年6月には、いわゆる「ちょい飲み」需要を取り込むべく、夕方からアルコールと軽いつまみを提供する「ちゃんぽん酒場」を浅草に、今年1月には2号店目を上野御徒町にオープンした。

 出店戦略に関しては、今期はショッピングセンター内のフードコートを中心に39店舗を出店し、郊外ロードサイド店舗のリロケートを含めて11店舗を退店した。

 ショッピングセンターのフードコートといえば、家族・子連れの顧客が多く、顧客ターゲットとメニューを含めたスタイルが合致しているのだろう。ショッピングセンターの高い集客力に伴い、売り上げも伸びている。また、フードコート店舗はセルフサービス型で投資効率も良く、店舗展開のモデルが完成してしまえば横展開しやすい。今後もフードコートへの出店は積極的に行うのではないだろうか。

 リンガーハットの好調を支える要因を幾つか挙げたが、総じて時代に合わせた柔軟な戦略をとっていることが分かる。特にすべて国産野菜に切り替えるというのは大胆な方法だったが、これをきっかけに、文字通り顧客の胃袋をつかみ、再注目されることになった。業界全体が不振にあえぐ外食産業。復活のためには、このような大胆な転換策が必要なのかもしれない。ブラック企業のレッテルを貼られてから、いまだに苦境から抜け出せないでいるアノ企業も参考になる事例だろう。

著者プロフィール

三上成文(みかみ しげふみ)

フードアナリスト・ブランディングプランナー

東証一部上場外食ベンチャー企業にて、広報部門の立ち上げや、地方自治体、他社との業務提携PRを経験。その後、外食事業会社の立ち上げで、ブランディング・PRに携わる。


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